2009年05月25日

お見合い狂想曲(12)エピローグ

前回の次への引きが、見事なオチになってるとの指摘で、急遽ラストにひらめき
ただ、当初のプランのオチを書きたかったのでエピローグとして追加ですわーい(嬉しい顔)

そんなに間を空けないで、次回作を執筆予定。
ちょっとホロリの感動ものを書けるといいなあるんるん


お見合い狂想曲(12)エピローグ


「では、これで失礼しますぅ」
扉が開き、古代遺物管理部機動六課部隊長八神はやてが出てくる。
ここは時空管理局本部。
彼女は数週間前に起こった管理局を揺るがす未曾有の大事件、「JS事件」の捜査報告の為、本部の司法部に赴いていた。
やっと、被害を受けた地上本部をはじめ、市街や機動六課隊舎など、復興はまだ端緒についたばかりだが、日々着々と元の姿に戻りつつあるのが、街を守った自分たちには嬉しい。


「主はやて、お疲れ様です」
「お疲れですぅ♪」
「シグナムもリィンも、出迎えご苦労さん」
通路脇の休憩スペースで、はやてを待っていたシグナムが居住まいを正し、リィンも飛び上がって彼女の脇に来る。
「やっと、これで一段落やなぁ」
「ですね」
シグナムが相槌を打つ。
後は司直の手によって、罪の詳細と刑が言い渡されるだろう。
もっとも、地上のトップであるレジアス中将が事件に深く係わっており、
あまつさえ、最高評議会も主犯スカリエッティの黒幕として暗躍していたのが明らかになり、管理局は地上も海も大混乱に陥った。
肝心のレジアス、最高評議会共に故人となり、六課から引き継いだ司法部の局員の苦労が偲ばれる。

とはいえ、六課挙げての案件であったレリック関連事件が終わったものの、ロストロギアが係わる犯罪は後を絶たず、隊舎の復旧、戦力の整備と、立ち止まることは許されない。
六課稼働期限までの残り数ヶ月、まだまだはやてには休む暇は訪れないだろう・・・・


「マイスターはやて。これからどうするんですかぁ〜」
リィンがこれからの予定を聞く。
「そうやな、お昼も近いことだし、ご飯食べてから六課にもどろか」
そう言うと、局内のレストラン街に向かう。
「わーい♪」
「お供します」
リィンは喜び、シグナムも後を付いて行く。



通路を歩きつつ道すがら、これからの六課の復旧計画に話題が上る。
「うーん、やっぱり予算を組み直してもらわんと、上手くいかへんなあ〜」
指揮官の仕事は行動主針の立案と予算の獲得、これに尽きる。
「ヴァイス陸曹も、事件でかなり無理をしたのでヘリの方、新規で導入して欲しいらしいですぅ〜」
「テスタロッサも、残った指揮機器での作戦実施は十分に能力を発揮出来ないと漏らしてました・・・・」
「まあ、なんとかなるやろ。あの人もいるし・・・・」
思案顔のはやて。
「リンディ統括官やクロノ提督、騎士カリムですか?」
六課設立の後ろ盾の三人の名を挙げるシグナム。
「・・・・そんな感じやな」
なぜか、歯切れが悪い彼女。


司法部を抜け、主計部に差し掛かった時、前方に大荷物をかかえた局員が覚束無い足取りで歩いてきた。
見れば、ボックスにデータファイルやらメモリーディスクやら山積みで前が良く見えないようだ。
「あれしきの荷物で、あの足取り。鍛錬がなっとらん・・・・」
そんな風に思いながら、その局員の為に通路を空けてやる。
しかし、彼は通路に飾ってある空気清浄を兼ねた観葉植物に躓くと、彼女の方に倒れこんできた。
臨戦態勢でなく、しかも自ら避けて十分な幅があったので不意を突かれた。
「おわっ!!」
「きゃあ」
珍しくかわいい声を上げるシグナム。


「す、すいません・・・・」
散らばったファイルやディスクを拾い集めながら、彼女に平謝りをする彼。
「なあ、大丈夫かぁ〜」
はやてが気遣う。
「貴様、もっと良く前を見て歩かないか!!」
叱責をするシグナム。
「す、すいません・・・・。あっ!」
殆ど集め終わり、シグナムを見上げた彼は、思わず声を上げた。
「ん、貴様、どこかで見た覚えが・・・・」
何かを思い出すように、彼の顔をしげしげと覗き込む」
「ふへっ、シグナム二尉は局内でも有名ですから、なんかで会ったのでは・・・・」
視線を微妙に逸らしながら、そそくさと立ち去ろうとする。
「あ〜、どこにでもいる局員じゃないんか」
「ですぅ〜」
何故か彼のフォローをする、はやてとリィン。


「むっ! 貴様、まさか黒淵俊夫か?」
シグナムが記憶の片隅から、彼の名を思い出す。
「なぜ、貴様がここにいる!!」
驚きと共に、訝しがる彼女。
「あちゃー、バレてしもうた〜♪」
「あちゃー、ですぅ〜♪」
はやてとリィンが嘆息する。
それを見咎めたシグナムが、はやてを詰問する。
「主はやて、こいつの事を知っているようですが・・・・」
思わずジト目になる彼女。
「まあ、ここじゃなんだし、ゆっくり出来るとこで話しよか」
彼女をなだめるように、肩を叩くと、レストラン街へ促す。
「黒淵はんも、な」
「はい」
三人に続いて、俊夫も続く。



カフェに陣取ると、六課の三人と俊夫が向かい合う。
「改めて問う。なぜ貴様がここにいる?」
シグナムが詰問する。
「あ、それはなあ・・・・・」
はやてが口を挟む。
「申し訳ありません。主は少し黙っておいてくれませんか?」
彼女にしては珍しく、はやての言葉を制す。そして、再び俊夫に向き直る。
「俺、いえ私が頼んで此処に来たんです!!」
決意に満ちた調子で、シグナムに告白する。
「あの見合いの後、自分は刹那的に生きている事に気づきました。
貴女の叱責で目が覚めました!
自分の知らない世界が有り、そこで命を懸けて人々の平和を守っている人たちがいる事を」
「リンディ統括官、クロノ提督には、全てを忘れて今まで通りの生活にと、強く言われましたが、こんな自分でも人々を助けることが出来るんじゃないかと思って・・・・」
熱がこもる。
「黒淵はんなぁ、あの後、リンディさん家をなんでか見つけ出してなぁ、夜討ち朝駆けで頼み込んだらしいんや」
「フェイトさんも、困ってたですぅ〜」
二人がフォローする。
「で、お二人に後見人になってもらって、ミッドチルダの管理外世界から来た人の為の専門校でみっちり勉強して、入局したんです!!」
「む、そういうことか・・・・」
納得したシグナム。
「残念ながら魔力は殆どなかったので、八神隊長みたく、魔導師としての入局は叶いませんでしたが・・・・」
今度は少し落ち込む俊夫。
「そ、それでも、貴女を守る一助になるならと今は主計部で頑張っている次第です!」
ぐっと拳を握ると、おもむろにシグナムの手を握る。
突然の事態に、困惑する彼女。
「いまでは、それなりに仕事を任される位に成れました。
力ではダメですが、いつか必ず貴女に相応しい男になって、迎えに行きます!!」
熱の篭もった目で、シグナムをしっかと見る俊夫。
「おっ、愛の告白やな♪」
「熱いですぅ〜♪」
はやし立てる、はやてとリィン。


突然の告白に真っ赤になるシグナムだが、それを誤魔化す様に、
「主はやて。彼の事を知っていましたね?」
違う話題を振る。
「そうや♪ リンディさんとこに夜討ち朝駆けした頃から知っとるで。
ちなみに、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん、アルフに、ユーノ。
シグナム以外のヴォルケンズの皆が知っとる」
自分だけが蚊帳の外なのに愕然とする彼女。
「黒淵はんが優秀なおかげで、六課の予算や機材の融通も大分良かったで♪」
ニコニコ顔のはやて。
「お役に立てて、何よりです」
しっかと腕を組む俊夫とはやて。



「と言うわけで、バレちゃったからには、シグナムを誘うのは自由や。
黒淵はん、頑張ってや♪」
「頑張ってですぅ〜♪」
「はい!」
秘密が無くなって晴れやかな三人。
それを唖然とした顔で見るシグナム。


ちなみに、自由に行き来出来る様になって、ちょこちょこ六課に来るようになった俊夫とヴァイスの、シグナムを争う紛争が、勃発したとかしないとか・・・・


(おわり)


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2009年05月16日

お見合い狂想曲(11)

お待たせしましたひらめき
11話うpですわーい(嬉しい顔)


お見合い狂想曲(11)



時はシグナムが凶弾に襲われた時に遡る。

「「「シグナムっ!!」」」
凶弾に襲われる彼女を見て、ハラオウン家に待機していたフェイト、ヴィータ、リィンが声を上げる。
勿論、ヴォルケンリッターの将として、また時空管理局の空戦魔導師として超一級のレベルを誇る彼女が遅れをとる筈は無いと、皆認識しているが、やはり実際に襲われる所を見ると声を上げてしまう。
一方、お気楽組のリンディとアルフは、先の三人よりは信頼しているのか、それとも楽観視しているのか、モニターを見ながら飲み物を啜るだけで特に動きはなかった・・・・


モニターの中では、シグナムが防壁を張りながら、件のお見合い相手と巻き込まれた幼い兄妹を守りながら反撃の機を窺っている様に思える。
また別のモニターの中では、はやてやなのは、シャマルがあずまやを飛び出し、騎士甲冑やバリアジャケットに既に変わり、急行している様が映し出されていた。
『クロノ君、緊急事態や!』
『はやて、こちらは状況が良く分からない! 君が判断して良いと思う事をしてくれ!!』
『了解や!』
『シャマルはケガ人の救護。なのはちゃんは悪いけど結界張ってくれる?』
そんな会話が、はやてらとアースラとの間で交わされている。
「シグナム・・・・」
『Sir!』
フェイトの手の中で、バルディッシュが若干苦しげに明滅する。
どうやら、突発事態に思わず握り締めてしまったようだ。


・・・・・・・・・・


突発的な警護対象が居たとはいえ、歴戦のベルカの騎士シグナムに襲撃者の二人が敵う訳無く、拳銃の弾が効かず、うろたえた隙を突き、あっという間に取り押さえられた。
勿論、はやての的確な指示と救護で周りの被害も最小限に済み、巻き込まれた女の子の怪我もシャマルの癒しで治療と、指揮官ぶりも板についてる。
フェイトやリィンはホッと胸を撫で下ろすが、脇ではヴィータがシグナムが兄妹を誤魔化す為に言ったセリフを聞き、一転、笑い転げている。


そうこうしている内に、現地臨時本部に皆が戻ってきて、襲撃犯二人の尋問が始まる。
やがて、はやての巧妙な尋問に思わず重要なキーワードが出、早速アースラのエイミィが情報を弾き出して来た。
『海鳴組、一般には海鳴興産と言う事で通っているわ。活動内容は、飲食店や風俗店のゴタゴタ解決、ようするに用心棒ね。あとは薬物の売買、不動産仲介という地上げ等、なのはちゃん達の世界で言う『やくざ』の活動は一通りやってるみたいだね』
『所在地は海鳴市中央町に事務所、山の手台に組長の本宅があるみたい。
組長の名は『五十嵐(ごじゅうあらし)権造』、一人娘がいるわ』
データが即座に現れる。


どうやら襲撃者の正体は、娘の交際相手だった今回の見合い相手への復讐だったらしいが、それも誤解からとの、結論が出た。
「・・・・・?」
事の顛末に、フェイト、ヴィータ、リィン、アルフが微妙な表情を浮かべている中、フェイトが目を移すと、なにやら母リンディがプライベート回線ではやてと密談のようである。
と言うのも、クロノやエイミィは事後処理に追われそれどころではないし、ここにいる皆は密談をするような人物(母を除く)」ではないのはフェイト自身が良く知っている。
消去法で自ずから、捜査官として腹芸にも通じているはやてが上がってくるのは、道理だ。
(母さんとはやて、またクロノに内緒でなにか相談してる・・・・)
以前にも事件の捜査時、クロノが指揮担当なのにも拘らず、頭越しにリンディの許可のみで、はやてがおとり捜査を行なって、クロノが関係部署に謝罪に回ったと愚痴をこぼされた事を思い出した。
(クロノ、また大変な目に会うのかなあ・・・・)
フェイトがそんな風に考えていると、
『フェイト、ヴィータさん、リィンちゃん。少しいい?』
リンディが三人にプライベート回線を繋いできた。
『どうしたんですか?』
『ん?』
『はいですぅ〜』
シグナムのお見合いはとんだハプニングでお流れになったので、ここにいる面々が今更会場に行く理由は無いはず。
『クロノには内緒で、これから言う場所に行って頂戴。勿論、フェイトはバルディッシュ、ヴィータさんはグラーフアイゼン、リィンちゃんは蒼天の書を持ってね♪』
『『『???』』』
彼女の言っている事の真意が、いまいち分からないフェイト、リィンの二人は思案顔だが、ヴィータは面白そうな雰囲気を読み取ったのか、にやりと笑みを漏らす。
『行って欲しい所はね、海鳴市中央町○○−○よ♪』
先程のエイミィの報告にあった海鳴組の事務所の住所だ。


『ちょ、それって・・・・』
『母さ、リンディ統括官、何を考えているのですか・・・・』
案の定、とんでもない事態を察したヴィータは驚きながら、シグナムの見合いが中途半端で終わったうっ憤を晴らせると歓喜し、娘のフェイトに至っては自身の執務官としての規律と兄クロノの頭痛を思うと、到底看過出来ないと憤慨する。
リンディはそんな娘の生真面目さを好ましく思うが、更に反対しようとする彼女を制し、
『あら、管理外世界とはいえ治安は大事よ。それに悪い子にはお仕置きはしておかないとね♪』
作戦の詳細を言いつつ、いまだに二人の子供が居るとは思えない、少女の様な屈託の無い笑みで、怖いことをさらりと述べる。


『・・・・分かりました』
暫く沈黙をしていたフェイトだが、母リンディの押しの強さに根負けしたのか、しぶしぶ了承する。
『あくまで、今後のみんなの生活の平穏の為という事ですからね・・・・』
自分に言い聞かせるようにそう言うと、愛機バルディッシュを掴みソファを立つ。
「そんじゃ、行ってくるわ!」
「行ってきまーす♪」
ヴィータも相棒グラーフアイゼンをポケットに入れ、人の目に触れられないリィンは彼女の胸元に潜り込んで後を追いかける。
「・・・・? フェイト達は?」
アルフが家を出る様子に訝しがるが、
「これからもっと楽しいことが起きるわ♪まあ、これでも飲んで待ってらっしゃい」
キッチンからリンディが彼女専用のポットを持ってきて、アルフのグラスに超濃縮ジュースを注ぐ。
「・・・・ぐあっ!」
毎度の事ながら、その色の濃さに比例する甘さには馴染む事が出来ないアルフだった。



「ふう、これでシグナムのお見合いに係わる訓練は終了だな」
指揮卓で寛ぎながら、クロノが一息つく。
「現地の暴力組織が絡んでくるとは思わなかったが・・・・」
苦笑しつつ、モニターを覘き、シグナムらの様子を見る。
「んっ? 居ないぞ・・・・」
モニターの中には、無人となった現地臨時本部が映し出され、交信もシャットダウンされている。
「エイミィ、何か聞いてないか?」
「あっ、クロノ君、これ来てるわよ」
エイミィがコンソールを操作すると、クロノの指揮卓に一通の申請書が転送されてきた。



臨時特別訓練計画実施要綱

実施指揮官 八神はやて

統括責任者 リンディ・ハラオウン


訓練参加者 高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、シグナム、ヴィータ、シャマル、リィンフォースU

実施趣旨:
一般建築物内外における、対質量兵器戦戦闘の技量向上及び連携の確認

実施区域:
A 第97管理外世界 地球 海鳴市山の手台○−○ 五十嵐権造邸

B       同     海鳴市中央町○○−○ 海鳴組事務所


※尚、本申請書が発行され次第、本訓練を実施するものとする。



「なっ!!!!」
絶句する彼。
「あいつらー、それに母さんまで・・・・」
拳を握り締め、わなわなと震えるクロノ、
いつの間にか表示されているモニターには、結界に覆われた組長邸と事務所が映っていた。



posted by HAL at 12:24| 秋田 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | なのはSS 「お見合い狂想曲」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月26日

お見合い狂想曲(10)

家の手伝いやったり、ごろごろしてたらいつの間にかひと月経ってたふらふら
10話うpですあせあせ(飛び散る汗)
拍手と拍手コメもらえると嬉しいでするんるん


お見合い狂想曲(10)



「うっ!!」

年嵩の男がシグナムの気付けの施術で意識を取り戻す。
「目を覚ましたわよ」
目を覚ましたのを見て、アリサが知らせる。


「くそっ、ここは・・・・」
おぼろげな意識の中、頭を振り毒づく男。

彼を取り囲むようにはやて、シグナム等が居る中に俊夫の姿を認めると、
いきなり、
「てめえ、ぶっ殺してやる!!」
そう言いながら起き上がろうとするが、縛られているので叶わず、無様に転倒。
「ほらほら、あぶないやんか。気ぃつけてや」
はやてが男をもう一度ベンチに座らせる。
「お嬢ちゃん、すまねえな」
礼を言う男。
「お顔は怖いですけど、根はいい人なのかも・・・・」
一転して素直なその様子に、すずかが印象を口にする。

「やっぱり、黒淵さんと何かあるみたいだね」
率直な意見を言うなのは。

「やはり、この男に聞くしかないようだな」
シグナムが騎士甲冑のまま凄む。

「なあ、おっちゃん。なんで、この黒淵さん狙うん?」
はやてが尋問を開始するが、男はにべも無い。
「ふん、ガキに言う筋合いは無いな!」
「貴様! 主に向かって何という言う口を!!」
激昂するシグナムだが、そこは、はやてに諌められる。
「まあまあ。そこはちょっと搦め手でいこか〜」
はやてはそういうと、男の相方の若者の目を覚まさせる。


「なんや、このガキ共?」
縛られているが、周りにいるのが女子供ばかりと見て取ると、途端に強気になる若者。
「・・・・シグナム」
はやてが目で合図すると、シグナムはレヴァンティンを抜き、若者のノドもとに当てる。
若者のこめかみに冷や汗が浮き出る。

「ちょ、聞きたいんやけど、なんでこの人狙うん?」
はやてが同じ質問をする。
「サブ! 言うんじゃないぞ!!」
少し離された場所に座らせられた年嵩の男が、諌める。
「判ってまさぁ。このサブ、アニキの為に海鳴組の事は言いませんぜ」
得意げに口の堅さを自慢するが、重要なキーワードを言ったのを聞き逃さないはやて。
「エイミィさん」
『海鳴組ね。今、データ検索掛けてるから、ちょっと待って』
一息の間、皆の前に検索結果が現れる。



『海鳴組、一般には海鳴興産と言う事で通っているわ。活動内容は、飲食店や風俗店のゴタゴタ解決、ようするに用心棒ね。あとは薬物の売買、不動産仲介という地上げ等、なのはちゃん達の世界で言う『やくざ』の活動は一通りやってるみたいだね』
『所在地は海鳴市中央町に事務所、山の手台に組長の本宅があるみたい。
組長の名は『五十嵐(ごじゅうあらし)権造』、一人娘がいるわ』
エイミィがデータベースの検索結果を伝える。
「・・・・まさか五十嵐 遥?」
俊夫が思わず口にする。


「そうだ!! これは、おまえに捨てられた遥お嬢さんの敵討ちなんだよ」
今までだんまりを決め込んでいたアニキと呼ばれた男が口を開く。
「可哀相に。貴様に捨てられてから、お嬢さんは塞ぎ込んでしまって、日に日にやつれていらっしゃる・・・・。遂には入院までする始末。
幼き頃からお嬢さんのお世話をしてきたこのテツ、親父とお嬢さんの為ならタマ獲ることなぞ、苦にならん」
そう言うや否や、目に涙を浮かべおいおい泣くアニキ。
「テツアニィ〜、しっかりして下さいよ〜」
サブと呼ばれた若者も泣き始める。
非道を行なったヤクザ者と思っていたのが、思いがけない展開にあっけに取られる一同。
こうなると、彼女を捨てた俊夫がまるっきり悪役である・・・・


「ちょっと、待ってくれ! たしかに僕は遥と付き合ってたし、別れもした。
でもそれは、彼女の方から別れてくれと言われたんだよ。
『貴方とはもう付き合えないの。もっと迷惑が掛かってしまうから・・・・』
そう言われたんだ!」
アウェーの雰囲気を何とか挽回しようと、必死に理由を説明する俊夫。
「嘘を言うな!! 組長(おやじ)は確かにボロ雑巾のように貴様に捨てられたと、お嬢さんの事を嘆いていた!」
激昂するテツ。


「・・・・もしかして、家業を気にして彼女の方から身を引いたのを、親馬鹿の父親がカン違い?」
アリサが可能性を指摘する。
「にゃはは、ありえるかも・・・・」
なのはも苦笑い。
「だとしたら、迷惑な話だな。
罪もない子供を巻き込んでの狼藉。実行犯はこいつらとはいえ、指示を出した組長にも、それ相応の厳罰が必要だ!」
強い口調で、シグナムが憤る。
『ちなみに、警察の内部データでは海鳴市の犯罪の30%は海鳴組が絡んでいるという報告書が出ているみたいだよ』
エイミィが補足データを言う。


『・・・・リンディさん』
『なに? はやてさん』
プライベート回線で、はやてはリンディに念話を繋ぐ。
『少し、お願いしたいことが・・・・』
『面白いことのようね・・・・・』
いたずらっ子の様に、微笑むリンディ。

『・・・・・・』

『・・・・・・』

『・・・・じゃ、あとはよろしく願いしますわ〜』
『・・・・分かったわ。こっちのほうで上手くやっておくから、はやてさんも上手くね♪』
一通りやり取りを終える二人の顔は、まるで悪徳商人と悪代官の顔にそっくりだった・・・・


「はやてちゃん、なんか楽しそうなこと企んでる?」
勘のいいすずかが、こっそり耳打ちしてくる。
「まあ、楽しいことかはさて置き、サプライズなのは確かやな♪」
はやてもノリで、にこやかにすずかに耳打ちする。
「なになに? 私に黙って二人とも内緒話?」
アリサも寄ってくる。
「詳しいことは、見てのお楽しみや」
二人の傍を離れると、俊夫に向かって、
「俊夫さん、この騒ぎの原因はおおよそ見当付いたけど、もうちょいウチらに付き合ってや」
そう言い、
「なのはちゃん、シグナム、シャマルはうちと移動な。アリサちゃんと、すずかちゃんはフェイトちゃん家に待機でお願い」
と、テキパキと指示を出す。
「なんかあるの?」
「了解です」
「分かりました」
「ちゃんと、理由あるんでしょうね!」
「まあまあアリサちゃん。はやてちゃんの事だからちゃんと考えてのことですわ。
ここは戻りましょう」
アリサをなだめるすずか。
「・・・・ここは大人しく引き下がってあげるけど、こっちのチンピラ二人はどうすんの?」
無理に納得しようとするアリサが矛先を、二人に向ける。


「警察なんぞでビビる俺じゃあないぜ・・・・・」
「・・・・ないぜ」
二人そっちのけで事態が動き始めているのし、快く思っていないので虚勢を張る。
「そっちは、あとで丁重にピストル付きで警察の前に送ってあげるわ〜」
にこやかな中にも迫力ある言葉の調子で、はやてが述べる。
兄貴分のテツとは、ふた回り以上は年が離れているが、過酷な場数をこなした経験が違いすぎ、その雰囲気に明らかに迫力負けしている。
「じゃあ、みんな移動な〜」
あずまやの結界を解除して出る一同。



・・・・個室のテーブルの上に、
『急用が出来たので、これで帰ります。
          黒淵俊夫・シグナム』
という、書置きを残して。


posted by HAL at 14:20| 秋田 ☔| Comment(1) | TrackBack(0) | なのはSS 「お見合い狂想曲」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月30日

お見合い狂想曲(9)

そんなに間隔空けずに続きうpひらめき


お見合い狂想曲(9)



「くそっ!! 何だっていうんだ・・・・」
襲撃者二人組のリーダー格らしい年かさの男が、石橋から下がりつつ自動拳銃のマガジンを交換する。
「アニキー、おかしいですぜ。目の前の野郎とアマ、ガキども以外に周りの人が居ねえんでさあ・・・・」
さっきまでこの庭園には、くつろぐ宿泊客や、シグナム達のように個室で見合い等の用事で庭園を使っていた客が少なくはあるが、十人ほどは居たはずであった。
「おまけに目の前のアマは、おかしな手品でハジキの弾、弾きやがるし」
もう一人の子分格のチンピラ風の若者は、弾丸の無くなった銃を放り出すと、腹に巻いたさらしに差していたドスを抜く。



「痛いよー。痛いよー」
石橋から俊夫が少女の兄と一緒に彼女を抱きかかえながら反対方向へ下がる。
シグナムはそれを見届けると、懐に手をやり、ミニチュアの剣が付いたネックレスを取り出す。
「レヴァンティン!!」
『Anfang!』
一瞬で騎士甲冑に変わる。
「シグナムさん、貴方は一体・・・・」
怪我をした少女を介抱したことである程度、平静さを取り戻したのだろう俊夫が、シグナムの姿を見て驚愕する。


「アニキ! あのアマ、おかしな格好になりやしたぜ」
ありえない現象に、チンピラはドスを構えながら震えている。
「馬鹿野郎!! あんなの手品に決まってるだろ!! それよりもあの野郎を始末する事を考えろ!!」
油断無く構える兄貴分だが、対岸に下った俊夫を狙おうとすると、シグナムが行く手を阻む。
「姐ちゃん! そこをどきな!!」
「断る!! 幼子を傷つけるような輩に、どく道理は無い!」
強い調子でシグナムが拒否をする。
「こっちも義理の渡世でな、さっき散々撃って悪いけど、怨むんならそこの野郎にあの世でよく聞くんだな」
再び構えると、銃を乱射する。
しかし、弾は先程の盾のような物が無くなったにもかかわらず、彼女に届く寸前で弾かれる(フィールド系防御だ)。
勿論、後方の俊夫達には跳弾も行かない。
「貴様らには貴様らの理由が有るかも知れぬが、幼子を傷つけるような所業は、許さん!!」
険しい表情で言うと、、裂ぱくの気合を込め、レヴァンティンを振るう。
「「ぐわっ!!」」
魔力を込めないまでも、剣圧で起きた衝撃波で、襲撃者二人が吹き飛ばされる。
「シグナム!」
ようやく、あずまやから駆けつけたシャマルが俊夫達のところに着く。


「君は・・・・」
見慣れないドレスを着た(もちろん騎士甲冑)シャマルを見て、俊夫が訝しがる。
「黙ってて!」
シャマルは片手で彼を制すと、少女のそばに駆け寄り、彼女の具合を見る。
「お姉ちゃん。血がいっぱい出てるよ・・・・痛いよう」
泣きじゃくる少女をあやしながら、
「クラールヴィント!!」
「ja!」
指輪に軽く口づけすると、自身のデバイスに呼びかける。
『静かなる風よ、癒しの恵みを運んで』
涼やかな風が少女を取り巻き、傷が見る見る塞がる。
「流れてしまった血の分、完調じゃないけど、これで怪我はいい筈だわ」
シャマルがにこやかに微笑むと、少女も安心したのか、ぎこちないが笑顔を見せる・
「ありがとう、おねえちゃん!! おねえちゃんって、魔法使いみたいだねー」
「そうよ、おねえちゃんは白魔法使いなの」
「そっかー」
すっかり、こっちでの生活に順応しているシャマルは、はやてとのゲームで覚えたRPGのキャラで誤魔化しに掛かる。
そうこうしている内に、シグナムの方も片付いたようだ。


さすがに管理外世界の犯罪者とはいえ、バインドで縛るわけにも行かず、緊急処置で庭園の木々に巻きつけてあったロープを切り取ると、気絶している二人を後ろ手に縛る。
なのはとはやて、遅れてすずかとアリサも来たようだ。
「シグナム!大丈夫なんか?」
「主はやて、ご心配には及びません」
「そうか」
シグナムと怪我の治療の終わった少女を見て、ホッと息をつくはやて。
「高町も、結界、すまなかった」
「これぐらいでよくて、良かったです。ヴィータちゃんやユーノ君みたいに大きいの苦手なんで、にゃはは・・・」
なのはも様子を見て、胸を撫で下ろす。他の二人も同様だ。
「君たちは一体・・・・?」
騎士甲冑とバリアジャケットの4人、拳銃の弾を弾く不思議な現象と、信じられないものを見た俊夫が、疑問を投げかける。
「黒淵殿・・・・」
言いよどむシグナム。
「シグナム、事情説明は後や。なのはちゃんの結界は小範囲だから、騒ぎになる前に場所を移らんと」
そう言うと、はやてはキョトンとしている兄妹に、
「うちらは悪い人を懲らしめる、ないしょの魔法使いなんよ。さっきの事はお姉ちゃんとの秘密やで」
と軽くウインクすると、
「うん、秘密だよ!」
「カッコいいー!!」
憧れの目で見つめる妹兄。
『ほらっ、シグナムも念を押すんや』
「悪は滅びた。私は更に正義の為、赴かねばならん!」
「うん、カッコいいお姉ちゃん、頑張って!」
ヴィータに付き合わされたアニメのヒーローのセリフを咄嗟に言う彼女。
(ちなみにハラオウン家待機のヴィータはそれを聞いて、笑いこけ中)


「ほんなら、あっちの臨時本部に撤収!!」
兄妹をそこに残すと、はやての掛け声でみんなは元来た所を引き返す。
「なんやら、あんたにこいつら用があったみたいやから、付いて来てや」
疑問符だらけの俊夫に有無を言わさず、付いてくるよう促すはやて。
「・・・・判った」
納得いかないが、シグナムの力を見た後では、従わざる得ない彼。
「この二人、どうすんのよ?」
アリサが当然に疑問を口にする。
「シャマル、先にあっち送っといて」
はやてがそう言うと、シャマルはクラールヴィントに命じて転送の準備をする。



あずまやの臨時本部。
ただでさえ狭い所に、シグナムと俊夫に襲撃者二人と4人の大人が居るのでぎゅうぎゅう詰めである。
『・・・・でなクロノ君、うちも訳判らんのや』
『管理外世界住人との不必要な接触は控えて欲しいのだが・・・・』
『せやけど、なってしもうた事は戻らへんし・・・・』
『まずは状況が良く分からないから、調べてくれ。対応はその後に』
アースラのクロノと連絡しあったはやてが、通信を終わると俊夫に向き直る。
「黒淵さんやな、うちはシグナムの保護者の八神はやて言います。色々疑問なのは判るんやけど、それは置いといて、こっちの質問聞いてくれへんか?」
少し渋い顔をするが、魅力的な女性二人に将来有望な4人に見つめられ、不承不承頷く彼。
「見合いとこいつらが襲ってきたところ、こっちでも見てたんやけど、なんや顔見知りなん?」
「私もそれが気になります。たしかに撃ってきた時、明らかに彼を狙ってました」
シグナムも同じ疑問を口にする。
「知らない! 俺はこんな奴ら会った事も無い」
強い口調で否定する俊夫。本当に知らないようだ。
「それじゃあ、この人たちに聞くしかないようね」
すずかが一番手っ取り早い方法を提案する。
「それでは」
シグナムが年かさの男の背中を押し、目を覚まさせる。




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2009年03月17日

お見合い狂想曲(8)

8話目更新わーい(嬉しい顔)
いよいよ、物語は佳境にパンチ


お見合い狂想曲(8)



「なかなか、いい雰囲気だね」
モニターに移る二人を見て、なのはが率直に言う。
「ほんまかー?」
訝しげにはやてが反論。
「私にはそう見えるんだけどなあー」
はやてに否定されたことに得心が行かぬ様子。
『この様子を見てラブラブ言うんは、まだまだユーノ君に春は遠いようやなあー』
『全くだわ』
『なのはちゃん、鈍すぎです』
念話だとなのはに伝わってしまうので、アイコンタクトではやて、アリサ、すずかが嘆息する。
「おっ、なんや動きがあるような感じや」
覘き込んだモニターの中でシグナムが池のほとりに近づく。
『主はやて』
『シグナム、どうしたん?』
この場に似つかわしくない緊迫した声が届く。
『気のせいだと思いたいのですが、先程から殺気の様なものが僅かですが感じられるのですが・・・・』
「・・・・何やて!!」


・・・・少し前。
二人は、池に方に歩きながら、
「正直に言おう、私は貴方の様な男に好意が持てない。今日のも、主の対面を慮っての事。貴方に好意は一点も無い!」
「・・・・そうですか。主と言うのが良く分かりませんが、まあ、最初にこの話が出た時と相手が違ってたので、可笑しいとは思ってたのですが・・・・」
嘆息すると、俊夫は軽く被りを振る。しかもそれが様になってる。
さすが接客業で鳴らしていた男だ。落胆の色も自身の魅力として生かす所は抜け目が無いというか・・・・
『むっ!!』
異常な雰囲気で感覚が狂わされていたが、ひと段落が付いた今、シグナムの感覚に殺気の様なものが感じられた。
「どうかしましたか?」
急に立ち止まり、念話の為に無口になった彼女を訝しげに問う俊夫。
「いや、少し気になる事があったのですが、なんとも無いようです・・・・」
管理局の任務中なら枚挙に暇が無いほど感じている殺気だが、ここでそれを言っても彼を不安がらせ、尚且つそれが本当に自分達に向けたものか、知れないので適当にはぐらかす。
『やはり、十中八九、私に向けたものなのか・・・・』
過去に事件捜査等で敵対した組織の生き残りか、それとも『闇の書』絡みでの恨みによる復讐か・・・・
シグナムがそう考えながら、石橋を渡ってゆく二人。
石橋を渡り終えようとした時、
「お兄ちゃん! こっち、こっち!!」
「早く行きすぎー」
池の近くで遊んでいた兄妹が、また別の興味の引かれるものを見つけたのであろう、シグナムらの脇を通り抜けようとする。
「おっと」
狭い石橋を駆ける兄妹に少しふらつく。



「危ないから、走らない事」
兄妹の妹が落ちそうになるのを支えながら、俊夫が無駄に営業スマイルで諭す。
微笑ましいそれを見、シグナムは兄の方を気遣うように見たその時、黒い影が二つ、飛び出し現れた。
「黒淵俊夫、お嬢さんの怨みを思い知れ!!」
「・・・・思い知れ!」
二人の内、兄貴分らしい年かさの言葉に、弟分役も追随する。
その手には黒光りする自動拳銃とリボルバー式の拳銃が・・・・
一瞬、何が起こったか反応出来ずにいる俊夫とは裏腹に、シグナムは素早く防壁を展開しようとする。
しかし、今まで兄の方を向いており、また、着慣れない和服の分、僅かだが反応が遅れる。
『くそっ!』
舌打ちしながら、手をかざす。


『Panzerschild』
「ぎゃーん!!」
三角形に幾何学模様を組み合わせた防壁が展開されるが、同時に少女の悲鳴が響き渡る。
「しまった」
まだ棒立ちの俊夫の脇に駆け寄り、倒れている少女を見るとワンピースから出る二の腕が血に染まっている。ただ、運よく、当ったというより掠めたという方が正しいのだろうか・・・・
『シャマル!!』
『分かってる。今、なのはちゃん達と向かっている所。それまで、頑張って!!』
永年の付き合いだからこその迅速な対応。
パンツァーシルトという、不可思議なものの為か、銃撃が一瞬止む。
その隙にシグナムは、袂に手をやり、取り出したハンカチを傷口に巻くように結ぶ。
「痛いよー、痛いよー」
「大丈夫?大丈夫?」
泣き叫ぶ少女を抱きしめながら脇を見ると、妹を心配する兄とは裏腹に、今度はしゃがみ込みブルブル震えている俊夫。
展開が遅れたが、防壁のお陰で、再開した銃撃は弾かれている。
「おまえっ!! この娘を見て助けようと思わないのか?」
胸ぐらを掴み、強い調子で投げかけると、やっと正気を取り戻したのか、
「・・・・ああ」
と、幾分、気の無い返事をするが、少女を彼女から受け取る。
周りに静寂が広がる。どうやら高町が結界を張ったらしい。



『シャマル!!』
『分かってる。今、なのはちゃん達と向かっている所。それまで、頑張って!!』
シグナムの要請を受けるより早く、シャマルがあずまやを飛び出す。
『クロノ君、緊急事態や!』
『はやて、こちらは状況が良く分からない! 君が判断して良いと思う事をしてくれ!!』
『了解や!』
はやての言葉に、クロノも現場に一番近い彼女に指揮を一任する。
『シャマルはケガ人の救護。なのはちゃんは悪いけど結界張ってくれる?』
「すずかちゃんとアリサちゃんはここで待機な」
『わかったわ』
「分かったけど、わたし、そんなに強い結界張れないよ?」
「わかりました」
「わかったわ!」
先に飛び出したシャマルを追う様に、はやてとなのはがあずまやを出る。すでに騎士甲冑とバリアジャケットだ。
「パッと見、チンピラに見えるから対魔導師用の強いのは不要や。現場と周りを隔離する結界で十分」
「分かった」
なのはが了解する。
「レイジングハート!」
『All right、my master』
庭園を結界が覆う。



2009年03月10日

お見合い狂想曲(7)

宵闇さんのサイトにリンク張られた途端に物凄いアクセス数グッド(上向き矢印)
もっと楽しんで頂ける様、間を置かずに続きうpわーい(嬉しい顔)



お見合い狂想曲(7)


『キャスターよりセイバーへ、現状報告ええか?』
『こちらセイバー。
只今、こちらの仲人と合流。打ち合わせをしつつ、相手側の到着待ちです』
『了解や。シグナムはそのままテキトーに話を合わせて待っててや』
『・・・・わかりました』

ここは海鳴市中心部にある『海鳴エンパイヤホテル』。
広大な日本庭園に数ヶ所ある、あずまやの一つに陣取った臨時作戦本部。
ベンチには現地指揮官のコードネーム、キャスターのはやてをはじめ、オブザーバーのすずか(ライダー)。そしてなのは(アーチャー。最初はバーサーカーだった)、アリサ(ランサー)にサポートとしてシャマルが陣取っており、目の前のマルチスクリーンにはサーチャーによって、お見合いに臨むシグナムの姿が様々な角度で映し出されており、また、軌道上のアースラのエイミィ、ハラオウン家に待機中のリンディ、フェイト、ヴィータらの姿もそれぞれ見える。


「それにしても、やっぱり時空管理局の技術っていうのは凄いわね!!」
インカムを付けたアリサが感心する。
「こことシグナムさんやフェイトの家はともかく、宇宙空間にいる船ともリアルタイムで話せるんだから」
『おかげで、こっちは家でくつろぎながらシグナムの面白い場面が見れる訳だ』
『ヴィータ!!』
茶化すようにヴィータがせんべいを齧りながら介入するが(完全に野次馬モードだ)、咎める様にシグナムが念話で叱責する。
「念話って、こういう風に聞こえるのですね」
同じくインカムを付けたすずかも管理局の技術の一端と、普段はなのはらの間で交わされる念話の情景に感慨深そう。
『にゃはは、わたしもアリサちゃんやすずかちゃんと話せて嬉しいよ』
『アリサ、すずか・・・・』
敢えて念話で話すなのはと、こちらも感慨深いのかフェイトが呼びかける。
『感動のシーンのところ悪いんやけど、相手が来たみたいやで』
はやてが割り込んできて念話での会話が終了。


『こちらセイバー、相手を確認した。指示を請う』
『こちらライダーのすずかです。シグナムさん、とりあえず打ち合わせ通りに進めていって構いません。
何かあったら、改めて指示しますので、リラックス、リラックス』
緊張気味のシグナムへ、すずかが優しく声を掛ける。
『判りました。宜しくお願いする』
まだ幾分硬いが、少しは緊張が解けたようである。
『シグナム、がんばやで』
『がんばって』×2
『ファイトです、シグナム』
はやて、なのは、アリサ、シャマルが元気付ける。



「お待たせしてすいません。黒淵俊夫です」
顔写真の通り、ホストをしているだけあって、なかなか顔立ちの整った美男子が入ってくる。
「御免なさいねえー、道が混んじゃって・・・・」
相手方の仲人が、続いて入ってきて詫びる。
「八神シグナムです」
シグナムが挨拶をする。
シグナムに見とれたのか、一瞬棒立ちになる彼。
「こちらこそー。わざわざ来てもらいまして・・・・」
早速、社交辞令で返すこちら側の仲人の声で、我に返ったのか『コホン』と咳払いをすると、席に着く彼。
「写真で見るより美人なお嬢さんで、びっくりしましたわ」
「そちらこそ、なかなかの男前の方で、私もあと20年若かったら・・・・」
『いやだわー』という風にスナップの利いた手の振りで、おばさん同士の会話が本人達そっちのけで始まる。
シャマル程ではないが、近所付き合いで井戸端談義に無理やり参加させられることもあるシグナムは軽く受け流しながら、これからの段取りを頭の中で思い描き、確認する。
ふと、相手を見ると、しきりにアイコンタクトや『キラッ』と擬音が聞こえそうな感じでにこやかに微笑む俊夫。
・・・・どうやら、彼のお眼鏡にかなったらしい。
『シグナム、そこはニッコリしなあかんで!』
すかさずモニターしていた、はやてから指示が飛ぶ。
月村邸で猛特訓させられた微笑をする。
それを見て、自分の術中に入ったと思ったのか、俊夫も相好を崩す。

やっと、あちら同士の会話が一段楽したらしく、こちらに話題が振られて来た。
「シグナムさんは、今どういったお仕事を?」
「剣術を少々嗜んでおりますので、それを生かして、あるお屋敷で御婦人の警護とお世話を」
(勿論、今回の事ではやてらがでっち上げたウソ経歴。ちょっと引かれる強いところを強調する面もある)
「ほう、宜しかったらどこか教えていただけますか?」
「月村家ですが・・・・」
俊夫はしばし思案すると、
「ああ、月村家のお二人は存じてますよ。下のすずかさんは会った事ありませんが、上の忍さんとは一度パーティーで会ったことありますね」
さすが海鳴市有数の旧家である月村家を知っているし、シグナムの目から見ても美人な忍にも目を付けていたらしかった。

「黒淵さんは、会社ではどういったお仕事を?」
前もって打ち合わせておいた質問事項の一つを聞く。
「総務部で部長代理を」
「若いですが、立派な役職で」
シグナムが感心した風に言うと、気分を良くしたのか、
「まあ、帝王教育の一環ですよ。近い将来、親父の会社を受け継ぎますから、下の者の事も知らないと、と思いまして」
「ご立派ですこと」
こちらの仲人も感心する。


「なかなかの出だしやな」
「そうね」
はやてとアリサが感想を言う。
「うーん、前もって『たらし』だって事、知っていなければいい人に見えるんだけどなあー」
なのはが見た目から素直に述べるが、
「なのはちゃん、見た目で騙されてはだめですよ」
すずかが嗜める。


「・・・・という訳で、・・・・ですのよ」
「・・・・まあまあ、そうですの」
互いの仲人がそれぞれのアピールポイントをヨイショシしまくる。
ウソ設定と相手の所業も知っているシグナムは少し渋い表情をしかける。
丁度、そこを見られていたのか、
「どうかしましたか?」
少し訝しげに聞かれる。
「いえ、何でもありません」
将たる者、内心の動揺は指揮にも係わるのだが、不本意な会話が顔に出たようだ。
「さて、お互い自己紹介が済んだところで、若い人たちに任せて、私たちは退散しますか・・・・」
互いの仲人が席を立つ。



「・・・・シグナムさん、ちょっと外に出ませんか?」
俊夫が庭園に誘う。
「ああ」
黙っていても、間が持たないのでシグナムも、渡りに船とばかりに付いて行く。
広大な庭園には、池や石橋があり、宿泊客の子だろうか、幼い兄弟が池の鯉を眺めてはしゃいでいる様子も見える。
並んで歩きながら、おもむろに俊夫が口を開く。
「シグナムさん、もしかして私のこと知ってます?」
「あ、いえ、まあ・・・・」
「やっぱり。先程の貴女の顔、胡散臭げな相手を見るような感じでしたから・・・・」
「修行が足りなく、申し訳ありません・・・・。さすが、女性の機微を捕らえる事に卓越していらっしゃる」
こと戦闘に関しては管理局有数のSランク魔導師の彼女だが、ポーカーフェイスという点では、はやてという主を得て感情面が豊かになって数年、まだまだ修行が足りないらしい。
シグナムは苦笑する。






posted by HAL at 21:10| 秋田 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | なのはSS 「お見合い狂想曲」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月06日

お見合い狂想曲(6)

6話うpですわーい(嬉しい顔)



お見合い狂想曲(6)


「さて、いよいよD−DAYが明日に迫ったわ」

ここは、臨時対策本部となったハラオウン家のリビング。
事態をここまで大きくした張本人、リンディが嬉々として進行役を買って出る。
一般的な住居よりかなり広いはずのリビングではあるが、今日はさすがにギッチギチだ。
リンディ、フェイト、アルフの家主に、なのは、はやて、アリサ、すずか。
加えて、ヴォルケンズの5人と総勢12人は狭い・・・・


「まずは先日から行われていた、シグナムさんへの特訓の報告を」
リンディがすずかに発言を促す。
「はい。短い間でしたけど、マンツーマンでみっちりやりましたから、席での作法や、たしなみとしてのお茶やお花は問題無いレベルになっておりますので、大丈夫です!!」
「すずか殿が仰るとおり、十二分とはいえませんが、自分なりに万全の体制を取ったつもりです」
シグナムが言葉を続ける。
ただ、はやてやヴォルケンズの一部は昨夜の事があるので、僅かだが吹き出しかけ、彼女に睨まれ、なのはらには訝しげに見られている。



「次は、相手の人物の方ですね。エイミィさん」
リビング上方に現れていたマルチスクリーンの中で待機していたエイミィが報告する。
『黒淵俊夫、24歳、W大経済学部卒、黒淵商事総務部部長代理。そこまでは向こうからの情報で判っています。
で、あたしがデータベースに潜ったところ、大学では成績はかなりいい部類に入るみたいだね。出席もデータ上では少し欠席が多いくらいで特に問題は無いわ。まあ、代返という裏技もあるから、そこは正確かどうか疑問が残るところかな』
「会社での評価は?」
アリサが次を促す。
『給与考査のデータしか判らないけど、一般の同役よりはお給料は貰ってるわね。
ただ、極端にひいきされて多いとは言えないかな?
出勤も、日数的には毎日出てるみたいだけど、遅刻が月の半分近く有るわ。
残業はやっぱし身贔屓があるのか、全然無いわ』
情報端末へのハッキングが得意の彼女が、スラスラとデータを読み上げる。
「こっちのほうは、あんま変わり映えしないデータやなあ」
各々の手元に表示されたデータを見ながらはやては感想を述べる。
「数字じゃ、やっぱわかんねえよ。こーいうのは、地道な周辺の聞き取りだろ?」
はやてと共にロストノギアの捜査をしたり、最近ハマっている事件ドラマばりに、捜査手法をヴィータが言う。

『では、出番ですね』
別画面にアースラ捜査主任が出て、件の人物の聞き取り調査結果を報告する。
捜査班で周辺調査をしたところ、リミエッタ艦長補佐のデータとは別に結構な問題人物だということが判明しました』
「問題って?」
親友シグナムの相手とあって、フェイトが食いつく。
『はい、まずは学生時代ですが、必要最低限の単位を取る以外はアルバイトというか、容姿を生かした副業に勤しんでたようです』
「副業ですか?」
シャマルが興味深そうに聞く。
『こちらで言う『ホスト』という、接客業ですね。なかなかの売れっ子のようで店ではナンバー2の売り上げだったらしいです。
ただ、学生業との二足のわらじなので、実質トップのようです』

「ほう、なかなかのたらしぶりやなあー」
はやてが素直な感想を言う。
「主はやて、軟派な男など論外です!!」
シグナムが猛抗議する。
『で、やはりというか、なんと言うか、女性トラブルが絶えなかったそうです。
社会人になった現在も、複数の女性と親密な交際を続けており、一部、刃傷沙汰まで行き着いたこともあったそうです。そちらの方は、父の経営する海鳴市有数の商事会社の力で示談し、もみ消したみたいですが・・・・』
「男の風上にも置けんヤツだな・・・・」
質実剛健で鳴らすザフィーラが、憤慨する。
『また、こちらは未確認情報ですが、妊娠騒ぎも最近起こしており、女性の実家ともめているという話も有ります』
「本当だとしたら、酷いわね」
実子も含めて二人の母であるリンディも憤慨する。
『詳しい報告は、そちらに送った報告書に』
捜査主任は大役を果たしたという感じで、ちょっと画面から下がる。

「シグナムさん大変ですね」
「シグナム大変ですうー」
なのはやリィンが同情のまなざしを向ける。
「・・・・すまない」
予想以上の難人物とのお見合いとあって、怒りの為か、握られた彼女の拳はプルプルと震えている・・・・


「まあまあ、抑えて抑えて」
ともすれば暴発しかねない彼女をなだめつつ、リンディが明日の行動プランを提示する。
「シグナムさん、まず始めになのはさん家の近くの美容院で髪を整えてもらいます。
そちらは桃子さんの手配で予約済みです。その後、予定通り着付けをしてもらい次第、今回の現場である『海鳴エンパイヤホテル』に移動してとなります。よろしいですね?」
「・・・・了解です」
「人員配置は・・・・、エイミィさん」
『いろいろ検討した結果、現場ホテルの庭園別館に近いあずまやの一つに、現地臨時本部を作るわ。
そこには、作法のフォローですずかさんをメインに、指揮官としてはやてちゃん。そしてなのはちゃん、アリサちゃんの4人に、周囲から見えないように結界を張ってもらうのと、万一に備えてシャマルに付いて貰います』
「わかりましたわ」
「了解や」
「はい」
「わかったわ」
「判りました」
めいめいが了承する。
「おいっ! あたしはどーするんだ?」
シグナムの醜態?を直に見れるチャンスだと思っていたヴィータが、あからさまに不満を口にする
『あずまやはそんなに大きくないから5人までが精一杯なの。悪いね、ヴィータ』
「しゃーねーな」
エイミィに手を合わせられて謝罪されると、彼女もそれ以上突っ込まなかった。
『その代わり、こっちにもリアルタイムで映像流すから。
で、こっちには残りの皆が待機ね』
「はい」
「はいですぅー」
「了解した」
「わかった」
居残り組のフェイト、リィン、ザフィーラ、アルフが了承。
「わたしもなのー?」
リンディも少し不満そうだ。
『母さん、野次馬根性は止めて下さい!!』
今まで沈黙を続けて、成り行きを眺めていたクロノが初めて口を出す。
『大勢押しかけていっても、どうしようもないでしょ。自重して下さい!!』
「残念だわ・・・・」
心底残念そうに引っ込む彼女。ソファの隅っこにのの字を書いていじけている・・・・


その後は、桃子やすずかからの情報を元にお見合い時の大体の流れや、作法を打ち合わせしたのち、お開きとなった。
「シグナム!」
はやてたちと一緒に帰路へつこうとする彼女をフェイトが呼び止める。
「なんだ、テスタロッサ?」
「明日、私はあっちへ行けないけど、こっちで貴女の様子を見ながら応援します。
頑張って下さい!!」
力強く手を握り励まされ困惑顔のシグナム。
まあ、全力でお見合いを流すという作戦も可笑しいのだが・・・・
「ああ。私なりにベストを尽くすつもりだ。主はやてに恥は掻かせたくないしな」
少し苦笑気味に、微笑むとフェイトに手を少し振りながら、先に出たはやて達のもとへ行く。



posted by HAL at 17:09| 秋田 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | なのはSS 「お見合い狂想曲」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月27日

お見合い狂想曲(5)

つづきうpひらめき
ご感想&拍手が次回の元気の源ですわーい(嬉しい顔)



お見合い狂想曲(5)


トントントン
キッチンから、包丁の規則正しい音が聞こえてくる。
「よし、下準備はこれでおわりっと」
「はやてちゃん、これどうします?」
シャマルが出汁の張られた土鍋を差し、はやてに聞く。
「まだ、火、かけんといてな。シグナムが来てからや」
色とりどりの具材が並ぶ皿をテーブルに置きながら、はやてが答える。


「はやてー、まだー?」
「せやから、もうちょっと待っててや。ヴィータ」
もう待てんとばかりに、ヴィータがもう椅子に座って、箸を両手に持って催促をし始める。
「ヴィータ、意地汚い真似はよせ」
見かねたザフィーラが定位置のソファ横から、キッチンに来ながら彼女を嗜める。

「だってよー、晩飯まで戻ってくるって言ってたのによ、遅いじゃんかー」
持った箸ごと、手を振り上げ、脚をバタバタさせながら不満を言う。
「ヴィータ!! めっやで」
小皿や茶碗をシャマルと二人で配膳し終わったはやてがヴィータの鼻っぱしらを摘む。
「む゛―。ばや゛て、ごめ゛・・・・」
お仕置きをされたヴィータが謝ろうとしたところへ、


『ただいま戻りました・・・・』
ドアを開け、シグナムが入ってくる。
「おかえりー、シグナム。ご苦労さんやったなー」」
「「シグナムおかえり」」
「戻ったか。シグナム」
はやて、シャマル、リィン、ザフィーラがそれぞれ戻ってきたシグナムを労う。
「・・・・遅いぞ! シグナム」
鼻頭を赤くし、ちょっとさすりながらヴィータがシグナムを迎える。


「・・・・主はやて、ただいま戻りました」
シグナムが改めて、はやてに帰任の挨拶をする。しかし、口調はなぜか少し固い。
「ご苦労さんシグナム。すずかちゃん家の特訓はどうやった?」
はやてが、今回の主題である月村家でのシグナムへの特訓の様子を聞く。
一応、学校ですずかには様子を聞いてはいるのだが、
『順調ですわ。心配しないで下さい』
と、にっこり言うだけで、詳細は明かさずじまいだったので、はやてとしても気になる所だった。
「・・・・いえ、全く順調でした。全く問題ありません」
なぜか、機械的に返答するだけで、要領を得ない。
「なんだか、シグナムの様子おかしいですわ」
「「変なシグナム・・・・」」
「どうした?」
ヴォルケンズの4人が訝しがる。
「せやから、どんなだったか教えてくれんかなあー」
「リィンも聞きたいですぅー」
ちょっと上目遣いで、シグナムにおねだり気味で問いかけるはやて。
リィンも真似をする。


しばらく沈黙が続いたが、ようやくシグナムが重い口を開く。
「まず、朝は私の日課のジョギングをすずか殿と二人でやりました。
軽く汗を流した後、朝食を頂き、すずか殿が登校したらファリン殿と一緒に後片付けを手伝いました」

「ほんで?」
「午前中は、ファリン殿の指導でお花を。午後からすずか殿が帰ってくるまでは、執事の方から作法を」
「ファリンかー、あいつに花なんか出来たのかー?」
ヴィータが疑問を口にする。付き合って大分経つので、もうヴォルケンズにも彼女は『ドジッ娘メイド』という認識が浸透している・・・・
「まあ、出来は微妙でしたが、教え方は良かったですよ」
苦笑しながらシグナムは話を続ける。
「すずか殿の時間が空く時間から、マンツーマンで座学のおさらいと、お茶の指南を夜半近くまで受けていました・・・・」
お茶の指南を受けていたというシグナムの言葉がだんだんと小さくなってきた。
そして、心なしかこめかみに汗が・・・・
「どしたん? シグナム」
「いえ、大丈夫です!!」
勤めて平静を保とうとするが、はやてが心配そうに覗き込むと視線に耐え切れなくなったのか、
「主はやて。特訓は終了でよろしいですか?」
「うん、後はええよ。シグナムお疲れさん」
はやてが労をねぎらうと、彼女は『ふう』と一つ大きなため息をつき、力を抜くと口を開いた。


「あれは、壮絶でした・・・・」
「「「「???」」」」
周りが一様に疑問を浮かべると。
「すずか殿は教える側に立つと性格が豹変するみたいです・・・・」
「ああー、それはあるみたいやなあー」
はやてが相槌を打つ。
「前になのはちゃん達(主にはやてと国語が苦手なフェイトだが)と勉強会やったら、すずかちゃん、めっちゃ厳しかったなあー」
ちょっと遠い目をするはやて。ただ、フェイトは苦手教科の国語も最近克服しており、もっぱら、はやてのみのシゴキ場と化している・・・・
とつとつとすずかのスパルタ教育の様子を語るシグナム。
「これほどまでに自分の無力を感じた時は、闇の書の呪いに主が犯され愕然としたあのとき以来です・・・・」
「いや、それはいいすぎやろ・・・・」
はやてが思わずツッコミを入れるが、やもすると顔に縦線が浮かんでいるのが見えるくらいの落ち込みよう。
「まあ、そのおかげですずか殿からは、お茶や華道の師範になれるくらいだと太鼓判推される位まで言われましたが」
「シグナム、がんばったのねえー」
シャマルがねぎらうが、少しからかう口調が入っているのは、やはり他人事からなのか。


「今回は、主の面目とすずか殿の熱心さに打たれやりきる事が出来ましたが、主はやて、このような無理な事は今後、遠慮願います」
ヴォルケンリッターが烈火の将、シグナムには似つかわしくない弱気な発言だ。
それほど、過酷な特訓なのが窺えるが・・・・
「以前、高町なのはと死合った戦技披露会のほうが、まだ気が楽です・・・・」
「ごめんなー。今回だけやから」
本番の見合いがまだな今、肝心のシグナムに落ち込まれては堪らないので、勇気付けに掛かるはやて。
「まあ、なんだ、シグナムの落ち込んだ所を見られただけでも、ラッキーだな」
なんか、大人しいと思っていたらヴィータは声を出さず腹を抱えて笑っていたらしい。
その証拠に、未だに『ヒィヒィー』と息が可笑しいし、目尻には笑いすぎによる涙も見て取れる。
「・・・・ヴィータ! 後悔するなよ」
全部言い切って、幾分気が楽になったのか、シグナムがヴィータに凄む。
「本番前に凄んでも、意味無いじゃん」
「ぐっ」
大一番を思い出し、また落ち込みかける。


「ほらほら、喧嘩は止めて。無事特訓も終わった事だし、シグナムを慰労する意味で今夜は鍋にしたんやから、みんな、なかようなー」。
なんとかまとめにかかるはやて。
やっとそれぞれ席に着き、シャマルがコンロに火をつける。
鍋合戦の始まりだ。


・・・・後日、全てが終わった後、シグナムに仕返しにすずかの元へ、ヴィータがやられるのは別の話である・・・・




2009年02月11日

お見合い狂想曲(4)

なんとか続きをうpひらめき
感想とか下さると嬉しいでするんるん


お見合い狂想曲(4)


カチャ。
「ただいま。母さん」
「おかえり、フェイト」
金色の髪の少女がドアを開けると、エメラルドグリーンの髪の女性が明るい声でキッチンから彼女を迎える。
「おかえりー♪ フェイト♪」
緋色の体毛を持つ小型犬が、リビングから少女に駆け寄って胸に飛び込んでくる。
「ただいま、アルフ」

「お邪魔しまーす♪」×3
少女・フェイトの後ろから、なのは、アリサ、はやての三人が次々と上がってくる。

「みんな、いらっしゃい」
エプロンをつけた女性・リンディ・ハラオウン統括官がリビングで彼女たちを待っていた。
「今、飲み物持ってくるから、座って待ってて頂戴ね」
「いえっ!! お構いなく!!!」
またキッチンに戻っていこうとする彼女をアリサが止める。
「そう・・・・、欲しかったら言って頂戴ね」
残念そうな彼女。

彼女が超甘党なのは、彼女やフェイトらハラオウン家が、ここ海鳴市に移り住んで4年程経つ今、周知の事実である。
(なのは、はやては管理局勤めで始めに周知済み)
初めてお茶をご馳走になった時、ティーカップに山盛りに何杯も入れられる砂糖に驚愕したアリサ&すずか。
冷たい飲み物でカ○ピスを出された時は、ほぼ原液に近く、思わず二人が噴き出したほどである・・・・
歯の危機を回避した3人のところに、カバンを自室においてきたフェイトがやってくる。

「すずかさんは・・・・」
リンディがいつものメンバーに一人足りないのを見て、聞く。
「すずかちゃんは、今日はちょっとこられないんよ。シグナムの特訓で」
はやてが説明する。
「じゃあ、これでみんなね」
リンディは、エプロンをキッチンのイスに掛けるとリビングのソファに座る。

「今日、フェイトさんに頼んで来てもらったのは・・・・」
「アレの件ですね?」
彼女の話を継ぐようにアリサがニンマリとしながら、リンディに向き直る。
「そう!! シグナムさんのお見合いの件なのよー♪」
楽しそうに手をパンと叩きながらにこやかに同意する。
「リンディさん、楽しそうですね」
なのはが、いい遊び相手が見つかったとばかりに笑みを浮かべるリンディの顔を見て嘆息する。
はやてもやれやれと首を振る。

「水臭いじゃない。同じ管理局の仲間として助けるのはあたりまえでしょ。こーいうのをこっちの世界では『同じ釜の飯を食べた仲間』と言うらしいじゃない?」
「ありがとうございます、リンディさん」
はやてがちょっとうるうるしている。

「で、統括官の私だけじゃ支援が大変なので・・・・、エイミィさん」
彼女がリビングの上方に呼びかけると、
『はいはーい♪』
上方にマルチスクリーンが出てきて、アースラの通信主任兼、執務官補佐兼、艦長補佐のエイミィ・リミエッタが現れた。
「エイミィ(さん)」
管理局員のなのはたちは言うに及ばず、アリサたちも闇の書事件以後は旧知の間柄である
『そちらの方は私たちに、おまかせー♪』
井戸端会議にいそしむ主婦のように、楽しそうな顔の彼女。
『エイミィ!!』
別のスクリーンが出て、今度はL型巡航艦アースラの艦長になったクロノ・ハラオウンが現れた。
渋い表情の彼を見て、はやてが口を開く。
「クロノくん」
『事情は、母さ(ゲフッゲフッ)リンディ統括官から聞いている。同じ管理局の仲間として協力はやぶさかではないが・・・・』
「おおきに、クロノくん」
「クロノ」
はやてが感謝を言い、フェイトが『さすがお兄ちゃん』という風に声を掛ける。
「クロノくん、ありがとう」
「あんた、いいところあるわね」
なのはやアリサも口々に口を開く。

『但し! これはあくまでアースラスタッフの訓練の一環として認めるのであって、エースクラスとはいえ、いち管理局員のプライベートを支援する物ではないという事は、分かって欲しい』
照れ隠しなのか、それとも母親の無理なお願いに屈したのか分からないが、そっぽを向いて言うクロノ。
「それでも、アースラのみんなが付いてくれれば百人力や」

『で、支援プランなんだけど、D−DAYまでは捜査担当は相手の詳しい経歴と周りの評価の洗い出し、私は勤め先や母校のデータバンクに入って成績とか調べてみるね。
はやてちゃん達はそれまでシグナムの特訓と、メンタル面のサポートね』
クロノの顔を横目で見ながら、敏腕執務官補佐らしいプランを披露するエイミィ。
『当日は、コンシール(隠蔽)能力に長けたサーチャーを場所に配置してこっちは管制、はやてちゃん達は現地でサポートという感じかな?』
矢継ぎ早に、当日のプランも出す彼女。
「あのー、あたしやすずかは、なのはみたいに念話とか使えないんですけど・・・・」
アリサが疑問を口にする。魔導師じゃない二人は当然、念話は使えない。
『その点は大丈夫! 二人にはインカムを用意するわ』
フォローも万全である。

「さすが、エイミィさん。完璧なプランね」
リンディは感心とばかりに手を合わせると、
「じゃあ、私はこちらでアースラと、はやてさんたちとの連絡役をやるわね」
『お願いします』

はやては勝手知ったる風にアクセスキーボードを出現させると、クロノ、エイミィの他にアースラの捜査担当班のデスクを新たに出すと、
「みんな、ありがとな。おおきにな」
『はやて、こっちも乗りかかった船だ、私自身はタッチしないが、必要なことはエイミィに言ってくれ』
『水臭い事言わないで、こんな面白いことに声掛けてもらって楽しませてもらうわ』
『いえ、シグナムさんにはいつもお世話になっているので、構いませんよ』
代表して、捜査主任が返答する。

『あー、さっき言ったと思うが、これはあくまで訓練の一環だからな。
状況が終わったら、うちのは勿論、はやて達やヴォルケンリッターの皆には、報告書を提出してもらうからな。リンディ統括官もそうですよ』
『・・・・えー』
意外なペナルティ?が付き、非難轟々の皆。
『当たり前だ!!』
頭痛でもするのか、こめかめを押さえるクロノ。



誰も気付いては居ないが、報告書が上がるという事は、管理局のデータベースに長期間載るという事であり、『闇の書』事件のように一部非公開のものもあるが、訓練の報告書は局員の誰もがアクセス出来る類のものである。
シグナムはこの件で、暫く頭を悩まされることになるのであるが・・・・



posted by HAL at 17:08| 秋田 ☁| Comment(1) | TrackBack(1) | なのはSS 「お見合い狂想曲」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月20日

お見合い狂想曲(3)

正月休みに書くつもりが、延び延びで今までふらふら
やっと続き書きましたひらめき



お見合い狂想曲(3)

「・・・・イケメンだわ」
アリサがファイルの写真を覘いて感想を言う。
「そうかも・・・・」
なのはがまあまあの感じで同意する。
「そーかー?」
ヴィータはあんまりキョーミ無さそうに、ケーキのひとかけらをフォークで突き刺し、口に放り込む。
「リィンは良く解らないですぅ」
「・・・・」
残りのヴォルケンズは特に意見は無いようだ。


「ほー、これが相手かー」
「うわっ、はやて!(ちゃん)」
写真を囲んでいるみんなの後ろから覗き込むようにはやてがやってきた。

「じゃーん!! お披露目やー!!」
結婚式の新婦入場ばりに、はやてがドアを開けるとシグナムが着物姿で現れた。
「・・・・あんまり、じろじろ見ないでくれるか。何か、こう、恥ずかしい・・・・」
頬を微かに染めながら、シグナムははやての後ろに隠れようとする。
長身ゆえに全く隠れていないが・・・・

「シグナム(さん)、キレー!!」
中学生‘Sは口々に賞賛の声を上げる。
シグナムが着ているのは薄紅色に菖蒲の柄が描き込まれており、傍目にも高級そうな感じが窺える。
それに、いつもはアップにしている髪を下ろしており、印象も大分変わっている。
「テスタロッサ・・・・」
「シグナム、素敵です!」
フェイトが感嘆の声を上げる。

「髪を下ろしただけで、大分変わってくるでしょ?」
シグナムの後ろから桃子が顔を出す。
「シグナムさんはスタイルいいから、何着ても似合いますね」
続いて入ってきたすずかも満足げな顔をする。
「まあ、馬子にも衣装ってことだろ!!」
ヴィータが茶化す。
いつもはここで、シグナムがヴィータを叱責してひと悶着あるのだが、緊張しているのか気付いていない。

着付けをした二人は、なのは達が見ていたファイルに気付くと、シグナムに渡しながら感想を述べる。
「うーん、こう、水商売っぽい雰囲気するわね」
桃子が今までの感想と違う意見を述べる。
「八方美人っぽい雰囲気はしますね」
すずかも同意する。
「軟弱そうな男に見えるな」
騎士らしい感想をシグナムが言う。

「経歴は、っと」
はやてがファイルを手にし、ファイルの経歴を読み上げる。
「何々、黒淵俊夫、24歳、W大経済学部卒、黒淵商事総務部部長代理?」
「24歳で部長代理?」
ありさが驚きの声を上げる。
「典型的な同族経営の会社のボンボンっちゅうことやな」
はやてが眉間にしわを寄せながら、あちゃーという感じでシグナムを見る。
「まあ、見合いするだけですから・・・・」
「シグナム・・・・」
フェイトが気遣う。

「思ったより情報が少ないなあ、何か、やっつけ仕事な感じもするし・・・・」
「そうですね、これは何かウラがあるかもしれません」
捜査官や執務官という役柄、分析をするはやてとフェイト。

「お母さんはどう思う?」
なのはが人生経験豊富な桃子の意見を聞く。
「そうよねえ、お見合いの仲人ってやったこと無いけど、もう少し、人柄や勤務成績、収入とか、もっと詳しく書くはずだし、仲人さんが説明に来るのが、筋じゃないかしら?」
「そうよね。おかしいわ!」
ありさが桃子の話に同意する。
「そういえば、うちんとこに仲人さんが一番最初に来ただけで、あとは電話だけやな」
はやてが桃子の意見を裏打ちするように言う。

『ぽーん』
時計が、6時を告げる。
「あらあら、もうこんな時間。はやてちゃん、シグナムさんの着物、どうするの?」
「さっき、桃子さんに教えてもろたけど、まだうろ覚えなんで、今日はやめにしときます」
桃子がはやてに聞くが、ちゃんと出来ないので遠慮したよう。
「じゃあ、着替えるから、もう一回二人には手伝ってもらえるかしら」
「はーい×2」
「了解です」
再び4人が出て行く。


「で、どうするんだ」
そんなに会話に加わらず、お茶のお代わりを飲んでいたヴィータが今後の方針を聞く。
「うーん、シグナムって作法とか知ってるんだっけ?」
ありさが基本的な疑問を口にする。
「本人やはやてちゃんに聞かないと分からないけど、知らないんじゃないかなあー」
なのはがうろ覚えっぽい感じで言う。
「でも、近所の剣道場で時々、稽古をつけたりするとか言ってたから、正座とかは大丈夫じゃないかなあ」
シグナムと一番親交の深いフェイトがちょっとした情報を披露する。
「うむ、その通りだ」
ザフィーラが口を開く。

「・・・・じゃあ、はやてやすずかが来たら・・・・ごにょごにょ・・・・」
ありさが対策を立てる。
「シグナムには、きつそーですうー」
リィンが絶句する。
「まあ、いいんじゃねーの」
ヴィータがいい薬だとばかりに皮肉る。
「シグナム、ガンバです(ぐっ)」
フェイトが心で応援する。
「すずかちゃん、あー見えて結構厳しいから・・・・」
なのはがシグナムのこれからの運命を思い、同情する。


「ただいまやー」
はやて達4人が着替えを終えて戻ってきた。

「じゃ、私は晩御飯の用意をするから、あとはお願いね。なのは」
「はーい」
「みんな今日はお夕飯食べてってね」
桃子が腕によりをかけて作るご飯は、みんなの密かな楽しみになっている。
「ごめんなさい、桃子さん。今日はこの後、まだ用事があるんで帰ります」
ありさがすまなそうに答える。
「残念ねえ、また今度食べに来てね」
「ありがとうございます」

桃子がキッチンに行った後、
「はやて、すずか、ちょっと」
ありさが二人を呼ぶ。
「なにー」
「なんでしょう」
「二人に聞きたいことと、お願いがあるんだけど、いいかなあ」



「・・・・・ぼそぼそ・・・・・」
「・・・・ああ・・・・、そうやなあ・・・・・」
「・・・・・わかりました・・・・・」


『ゾクリ・・・・』
シグナムの背に冷たい汗が走る。
歴戦の騎士である彼女が、かつて無いほど緊張する。


「じゃ、これで決まりで・・・・」
「了解や」
「引き受けましたわ」
一人カヤの外になったシグナムを見やり、したり顔の皆。

「・・・・なんでしょう?」
そこはかとない、いやな予感を覚えつつも、聞かずには置けない彼女。
はやてが代表して打ち明ける。
「えーとな、シグナム。これからシグナムはすずかちゃん家で、お見合いの時必要な行儀作法の特訓を受けるんや」
「主はやて、本当ですか?」
訝しげに問う彼女。
「冗談は言わんよー。立派な大和撫子になるんやで」
「シグナム、がんばれよー」
手をひらひらさせながら、ヴィータが気の毒なヴォルケンリッターのリーダーを見送る。
「シグナム、ガンバですうー」
リィンもどこから取り出したのか日の丸の旗を振り、応援する。
「・・・・しかし、私には任務が」
「有給、一杯溜まっているそうですね・・・・」
なのはが退路を断つ一つを言う。
「ぐっ・・・・」
「シグナム、頑張ってきて下さい」
フェイトがとどめの一言を言う。
「テスタロッサ・・・・」
良識人の彼女にも勧められ、万事休す。

「・・・・分かりました。不肖シグナム、立派に新任務を果たしてまいりましょう!」
彼女には珍しく、半ばやけ気味に宣言をすると、どすどすと音が聞こえそうな感じで玄関に向かう。
「おっ、ヤル気満々やな」
「じゃ、なのはちゃん今日はおおきにな」
「ケーキ旨かった(ぜ)(ですうー)」
「かたじけない」
「明日ねー」
「ご馳走様でした」
口々にお礼を言いながら、みんなが高町家を後にする。




posted by HAL at 23:03| 秋田 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | なのはSS 「お見合い狂想曲」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月13日

お見合い狂想曲(2)

なんとか2話目をうpわーい(嬉しい顔)
やる気が出るので、是非コメントで感想をパンチ


お見合い狂想曲2

『ワタシハ ナゼ ココニイルンダロウ・・・・』

そんなことをシグナムはぼんやり考えていた。
ここは翠屋。
はやてとの約束の時間まで少し早く来てしまった彼女は、なのはの母・桃子に強引に誘われるまま、店でお茶を頂いていた。
折から今は放課後、店内は学校帰りの女子生徒やお茶をしながら歓談する近所の主婦たちで賑やかだ。
その中で、彼女の居る一角だけが周囲の喧騒から切り取られたかのように隔絶していた。
いつもは彼女の凛々しい容姿から、女子生徒からの握手攻めや写メ攻勢もあるのだが、まるで顔に縦線が入って後ろに『ずーん』と重い雰囲気を背負っているかの様子に、チラチラと視線を向けるばかり。
「シグナム、このケーキ食っていいか?」
「ああ・・・・」
暗い彼女とは裏腹に、ちゃっかり付いてきてご相伴に与っているヴィータ(笑)。
上の空の彼女が生返事で応対すると、待ってましたとばかりに手付かずのチーズケーキを自分のところへ寄せ、早速食べ始めた。

ケーキにパクつき始めるヴィータを眺めながら、これからの事態を予想して暗鬱な表情を浮かべる彼女。
『主はやてが学校を卒業するまで、あと一年近く。無用な心配を掛けさせたくないものだが・・・・』
聖祥大附属中学卒業後は、管理局捜査官に専念する為にミッドチルダに移住することが規定路線なのだが、実際のところ、元守護騎士プログラムであるヴォルケンリッターの4人は老いることが無いので(特にヴィータ)、近所の目が厳しくなる前に詮索の目を避けるという意味もあった。
まだ早いものの、あちらに行った時には、はやてとシャマルが不動産屋巡りをしたり、管理局の福利厚生部門のチラシを取り寄せたり情報収集に余念がない。

などと考えているうちに、
『ただいまー』『おじゃましますー』『こんにちはー』×2、『おじゃましますですー』と、店の裏手の玄関側から声がするのがシグナムにも聞こえた。
『さて、行くか・・・・』
「ヴィータ! いつまで食べているつもりだ! 行くぞ!!」
やりきれない気持ちを半ばヴィータに当てながら、重い腰を上げる彼女。
「では桃子殿、上がらせてもらいます」
「いまこっちも一段落させるから、なのはに待っててもらってて」
「わかりました」
注文を受け、ホールケーキを厨房で切り分けている桃子に声を掛け、店舗と家を繋ぐドアに向かう。

「失礼する」
彼女が居間に入ると、なのはらが着物を前に熱心に話をしている。
「綺麗―!!」×2
「めっちゃ高そうやなー」
「すごいっ!!」
「憧れですぅー」
「自慢の一品ですわ^^」
桐の箱に入り丁寧に畳まれたそれを手に取っているすずかを見て、シグナムは逃れられない運命を悟ったw
「シグナムさん、こんにちわー」×2
「シグナム・・・・」
「シグナム。早かったなあー、そんなに楽しみにしてたん?」
「マイスターはやて、シグナムにそれは・・・・」
はやての辛らつな冗談に彼女の後ろではヴィータが腹を抱えて悶絶している。
ヴィータを視線で一喝するが、効果無く、はやても生温かい目で視線を寄こす。

そんなやり取りをしているうちに
「お待たせー、遅くなってゴメンねー」
桃子がみんなの分のケーキやお茶を持ってきながら、入ってきた。
「なのは、これみんなにお願いね」
「はーい、おかーさん」
テーブルに桃子が持ってきたのを、なのはが分ける。
「桃子さん、おおきにー」
「いただきますー」
はやてが礼とこれまでの経緯を簡単に桃子に説明する。
「まあまあ、シグナムさんが・・・・」
お見合い用の着物を着付けすると聞いて、彼女は目を輝かせる。
「じゃあ、早速シグナムさんに着付けるから、なのはの部屋借りるわよ」
「うん」
「あと、そーねえ、すずかちゃんとはやてちゃんにも手伝ってもらおうかしら」
「わかりました」
「りょーかいや」
着物を持つ桃子を先頭に、すずか、はやてと続き、どよーんと効果音をつけたシグナムが階上へいく。

「さて、シグナムたちが終わるまでこっちはこっちで作戦会議よ!」
「アリサちゃん、作戦会議?」
なのはが疑問を口にする。
「そーよ、お見合い初心者のシグナムさんを私たちが完璧にフォローして、大成功にするのよ!!」
「アリサ、大成功したらそれはそれで問題なのでは?」
フェイトがそもそも単なる近所付き合いの一環で仕方なく受けたのだということを強調する。
「そーですう」
「甘いわね! 問題なく進めて、返事で『フィーリングがしっくり来なかった』と言って断れば波風立たないでしょ?」
「そっかー」
なるほどといった感じで感心する一同。
「でも、肝心の相手の情報が全然無いよー」
なのはが作戦の要を指摘する。
「ああ、それについては大丈夫だ! さっきシャマルから連絡あって、ザフィーラが写真とプロフィール持ってくるって」
ヴィータがケーキ(何個目だw)をパクつきながら、疑問に答える。
そこへ、
『御免!』
玄関から声が聞こえてきた。
「噂をすれば、ザフィーラが到着だ」
フェレットモードのユーノを飼っていた経験や時折フェイトと共に訪ねてくるアルフの世話もあり、なのはは素早く足拭き用のタオルを準備して玄関に向かう。
「失礼する」
子犬フォームのザフィーラが大きすぎるリュックを背負って居間にやってきた。
「ザフィーラ悪いな・・・・(ぷっ)」
全然悪そうに見えない態度でヴィータがリュックからお見合い写真とファイルを取り出す。
『わざわざ持ってきてやったのに、その態度は・・・・』
『悪い悪い、お使い犬らしいなと思って・・・・』
『ヴィータ貴様!!』
念話でやりあう二人(?)を訝しげに見るみんなだが、そこへリィンが
「ケンカはダメですぅー」
「まあ、まあ。ザフィーラさんもまずはお茶でも飲んで落ち着いて・・・・」
「かたじけない、なのは殿」
なのはがとりなして、ひと悶着ありそうな事態は回避された。
「じゃあ、早速シグナムの相手を拝まさせてもらいましょうか」
アリサが写真を開く。





2008年10月20日

お見合い狂想曲(1)

とりあえず、キリのいい所まで書いたので、ちゃんとうp。
(お待たせしましたひらめき




「え〜!! シグナム(×2)&さん(×2)がお見合い〜!?」

ここは私立聖祥大附属中学の校舎屋上。
お昼のひと時を楽しく過ごす5人+1人(?)の中に衝撃が走った。
かなりの騒ぎにもかかわらず、彼女らを訝しげに見る人影は何故か居ない。

そんな中、
「そ〜なんよ〜、なんかいつのまにか、そーゆーことになってしもうて♪」

「です♪です♪」


てへっ♪という風な感じではやては、なのは&フェイト、アリサ&すずかを見渡す。
ちなみに、にこやかに同意するのはお弁当に入っていたデザートのみかんを器用に剥きながら食べている、リインことリインフォースU(ツヴァイ)。


「なんでまた、シグナムさんがお見合いなんて?」
衝撃から何とか立ち直った、なのはがみんなを代表して疑問を口にする。

「え〜とな、かいつまんで話すと、ほらっ、よくドラマとかでいるやろ。
仲人が趣味の近所のおばさんとか・・・・」
共通の知人の一大事に、彼女の一言も聞き逃すまいと、はやてにずずついとにじり寄って話を聞く一同。

「そやから、その人にな、シグナムが運悪く捕まってしもうて。来週の日曜にお見合いすることになってしもうたんよ〜」

ちょっと困った風な、はやてにシグナムの好敵手フェイトが聞く。
「シグナムは断らなかったんですか?」
「うんとな、断りたいのは山々なんやけど、やっぱりご近所付き合いとかあるんでなかなか断れんのや〜」
「それにな、ただでさえ、前は小学生の一人暮らしの家やのに、最近は見るからに怪しい(笑)外人の同居人が増えたんやから、あんまり邪険にもでけへんし・・・・」

「です♪です♪」

「まあ、住み始めてもう5年たって、色々ご近所付き合いも良好ななんやけど」

「えー、結構すごいんですよ。シグナムなんかは近所に忍び込もうとした空き巣や下着ドロなんかを沢山捕まえたし、シャマルはスーパーの特売なんかを得意の情報収集力で奥様方の情報発信基地、ヴィータも近所のお年寄りのアイドルでゲートボールにしょっちゅういってますですよ♪」
えっへんとばかりに、胸を得意げにそらすリイン。


「で、ものは相談なんやけど、ウチにあるお見合い用になりそうな着物無くてな、誰かに借りたいんよ」
どうやら、お正月用のものはあるみたいだが、気合が入っているみたいだと冷静に分析するすずか。

「でも実際はこのお見合い、潰れた方がいいんでしょ?そんなに気合入れなくても・・・・」
アリサが突っ込みを入れるが、はやては
「仲人さんや向こうさんの顔を立て意味もあるんや。こっちも全力全開、手加減無しでかからんと(笑)」
「はやてちゃん、それわたしの決めゼリフ!」
ぷんすかとばかり、ぽかぽかはやてに突っ込みを入れるなのは。


「では、着物の方は私が用意しますけど、着付けの方は丁度出来る人がいなくて・・・・」
すずかが名乗り出るが、どうやら問題あるらしい・・・・
「あっ、この前お兄ちゃんが言ってたけどノエルさん、忍さんと一緒にヨーロッパだっけ?」

なのはが、すかさずフォローを入れ、
「ちょっとリインちゃん、結界の強度ちょっと下げてくれる?家に聞いてみるから」
「はいです♪」
そう返事をすると、リインは軽く手を組み結界の強度を調節する。
実は、周りに誰もいなかったのは彼女が結界を張っていた為で、今は晩秋、普通なら屋上となると寒くてお昼どころじゃないのである。
ちなみに彼女の訓練も兼ねてで、授業中はバスケットの中でお留守番。

「あっ、お母さん? なのはだけど、忙しいところゴメン。ちょっと聞くけど、お母さんって着付け出来たっけ?」

「桃子さんに聞いているみたいやね」

「うん、分かった。じゃあ、あとで」

携帯を切ると、彼女は
「はやてちゃん。うちのおかーさんはOKだって」
「となると、あとは私の出番ね」とアリサ。
「もしもし、私だけど鮫島居る?悪いけど、迎えに来る前にすずかの家に寄って着物受け取ってきて頂戴」
「で、みんなでなのはの家に行くから」
と、テキパキと段取りを整える。さすがリーダー。

「じゃ、シグナムに連絡つけとくね」
「えーとなシグナム、放課後なのはちゃん家に来て。理由は薄々分かると思うんやけど、アレのことでな」

『分かりました、では高町なのはの家で』

「シグナムの声、硬かったですね」

オープンチャンネルで念話していた為、フェイトも聞いていたらしい。
「まあ、シグナムにとっては切腹モノの恥ずかしい状況なん」
はやてもぽりぽりとほっぺを掻きながら苦笑する。


「はやてちゃん、シグナムさんは騎士でサムライではないと思うのですが・・・・」

すずかも、念話は聞いてないが、フェイトとの会話から大体の彼女の心理状況を察したみたいだ。

「じゃあ放課後、アリサちゃんの車で家に集合という事で」

なのはがすかさずまとめて、お昼はお開きに。






posted by HAL at 16:39| 秋田 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | なのはSS 「お見合い狂想曲」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする