2009年07月07日

Take shelter from the rain(雨宿り)後編

思ったより構想が膨らんで、多めにひらめき


Take shelter from the rain(雨宿り) 後編



「なぁー、何か、お使いねぇーかー?」
ソファにひざ立ちすると、キッチンに居るはやてに足をバタつかせながら聞くヴィータ。

「珍しいな、ヴィータが進んで使いを催促するとは・・・・」
シグナムが新聞を見ながら、目線を変えず呟く。
「うっせーな!」
毒づくヴィータ。
「あらっ、ヴィータちゃん。最近はしょっちゅう、お使いに出てくれてますよ♪」
「うむ、感心している」
「偉いですぅー」
シャマルが珍しくないと言い、ザフィーラも肯定、リィンも褒める。


「実は理由があるんやなぁー♪ ヴィータ?」
夕飯の仕込み途中のはやてが、にこやかな顔でキッチンからヴィータを見やる。
「「「「「そうなのか?」」」」
どうやら、はやては熱心な訳を知っているみたいだ。
「・・・・うっせーな!」
ちょっと赤くなりながら、再び毒づく。きちんと座り直し、指をもじもじしているので、照れてるらしい。


「ヴィータのいい子ちゃんはな、お駄賃目当てなんよ」
仕込みがひと段落したのか、エプロンを外しながらはやてがリビングに来る。
「ヴィータ!! お前、主から月々、小遣いを貰っているのではないのか?」
「ヴィータちゃん、無駄遣いはダメよ!」
「うむ、我ら守護騎士、清貧を持って主への忠義と為すべきだ」
「そうですぅー」
他のヴォルケンズからめいめいに非難を受ける彼女。
「仕方ねーじゃんか。この前ゲーム買って、スッカラカンなんだ。ばーちゃんちのお菓子買えねーじゃん・・・・」
勢い込んで反論するが、次第に小さくなる。
「ばーちゃん・・・・・?」
「お菓子?」
ゲームやお菓子は兎も角、ばーちゃんとどうリンクするのか『???』を頭に浮かべ思案顔のヴォルケンズ。
「ヴィータ、一体なんだ? 主の決めた小遣いに不満があるのか?」
『ばーちゃん』と言う単語がどう小遣いに関わるのか分からないが、お菓子ということは買い食いをいつもしているという事だと認識したシグナム。
ちなみに、はやての家族の一員となった彼等に、彼女はめいめい小遣いを月々あげようとしたのだが、シグナムとザフィーラは固辞し、シャマルは、はやてと買い物に行った時だけ必要なもののお金を頼むという事になり、実際に小遣いを貰っているのはヴィータだけだった。
リィンは、はやてやシャマルにたまーにおやつを頼むだけで、彼女も小遣いを貰ってない。


「あんな、3丁目にな、駄菓子屋があってん。ヴィータはそこのおばーちゃんと友達なんやてー」
沈黙したヴィータに代わって、はやてが件のばーちゃんの正体を言う。
「うちも、この前ヴィータと一緒に買い物に行った時に寄らせて貰って、スモモ漬け食べたんよ。旨かったでー♪」
「お菓子の値段も、10円から100円ぐらいまでで、小学生にも優しいリーズナブルな価格設定や」
駄菓子屋のスポークスマン張りに、店の宣伝をするはやて。オキニの店になったみたいだ。


「ヴィータ、使いを熱心にするのは感心だが、そんな下心があるようでは、主はやてのお金を無駄遣いしているのと変わらんぞ!」
シグナムが苦言を呈す。
「そうだな。ヴィータ、お前は少し菓子類を控えたらどうだ」
ザフィーラも、普段、ヴィータの大食漢振りを目にしている分、言いたかった様だ。
「何だよー、労働の正当な報酬だろー」
ヴィータもテレビや漫画の知識や言い回しをフル活用し、反撃を試みる。


「じゃあ、これならどうかしら?」
ヴォルケンリッターの参謀役、シャマルが献策を述べる。
「普通の買い物のお釣りを、お駄賃としてヴィータちゃんが貰うのがダメなら、
節約して、その浮いた分のいくらかをお駄賃にしたら?」

「おおー、ナイスアイディアや。さすがシャマル」
料理の腕は、多少マシになっただけで、依然シャマルクオリティが健在だが、買い物上手は日々、上達しているようである。
「それなら、お金貰ってもいーのか?」
「普通なら、無い筈のお金を貰うのだから、異論は無いんじゃないのシグナム?」
「そやなー、ヴィータの頑張りのご褒美やからなー」
発案者のシャマルが、シグナムに意見を求め、はやても了解する。

「主が、そう言われるのなら、私としても異論はありません」
シグナムが折れる。

「ただし! これからはちゃんとどれだけ安く買えたか、ノートにきちんとレシートと一緒にまとめる事! いいわね?」
お金の流れをきちんとさせる為に、シャマルが釘を差す。
「わーったよ! あたしの実力を見せてやる!!」
ヴィータは立ち上がると、胸を張り高らかに宣言する。

「動機が不純だが、主の許可が出たなら仕方ない。励めよ」
「健闘を祈る」
「頑張るですぅー」
シグナムはため息混じりに、ザフィーラは淡々と、リィンは嬉々と応援する。
「おう!! 任せとけ!!」



彼女の日課にまた一つ仕事が出来た。
日課の玄関掃除と朝食後のザフィーラの散歩、はやての登校を見送った後、いつもなら早々とゲームを引っ張り出すか、近所のゲートボールサークルに出かけるのだが、あの日以来、スーパーのチラシを熱心に見るようになった。
最初は漫然と、チラシを見るだけだったが、そのうち、主婦業が長い桃子やリンディにアドバイスを求めるようになり、最近は独自にノートに各スーパーの傾向(どの食品が安い傾向&特売日一覧)をびっしり書いて、勉強するようになった。

『下心から発した事とはいえ、努力には目を見張るものがある』とは、シグナムの談だが、
『努力の少しでも。任務に回してくれれば・・・・』と、苦笑する。

ヴィータの頑張りは凄まじく、最終的にはシャマルは言わずもがな、桃子やリンディ、近所の主婦に重宝された・・・・




「ばーちゃん! 来たぞー!!」
店のガラス戸を勢い良く開けると、ヴィータが駆け込む。
「まんずまぁ、ヴィータちゃん、よぐきたなぁー」
椅子から『どっこいせ』と立ち上がると、老婆は彼女の頭を愛おしそうに撫でる。
「へへー♪ 今日は何買おうかなぁー」
老婆の少し過剰なスキンシップを嫌がることなく、ショーケースのお菓子を物色し始める。
「今日は、杏アメ買いなっせ。うめぞー!」
そう言うと、ケースの中からアメを一つ取りだすと、彼女に差し出す。
「じゃあ、40万円だな♪」
もうすっかりこの店の常連のヴィータが軽口を叩きながら、お金を老婆に差し出す。


店舗部分と住宅の境の段差に二人並んで腰掛けると、杏アメを舐めながらヴィータが家での事を老婆に語りだす。
流石に魔法や管理局の任務の事は言えないし、言っても子供の絵空事と笑われるだろうが・・・・
必然的に、いつも口煩い烈火の将シグナムへの愚痴や、いつも優しく接してくれる主はやて、公私共に交流が深く親友とも言える、なのはの事が多くなる。
「・・・・でよー、あのおっぱい魔人、いっつもあたしの事、『落ち着きが無い!』とか、言うんだぜー」
最初は愚痴だったが、次第に熱を帯び、口から泡が飛び出そうなくらい興奮してくる。
老婆は、『・・・・んだ、そんだなぁー』とか『まんずまぁー』と、親身に聞いている。

アメ玉がなくなってきた頃、
「じゃ、ばーちゃん、またなー」
「ヴィータちゃん、また来てなー」
「次来るの、ちょっと後になるから、いっぱい買いに来るぜ!」
「楽しみだんのー」
そう互いに声を掛け合うと、店を後にする。






「はやて、ただいまー。アイスあるー?」
玄関に上がるや否や、挨拶もそこそこにヴィータは真っ直ぐキッチンに向かい、冷蔵庫のフリーザーを物色する。
「何だヴィータ、長期任務から帰って早々、意地汚い!!」
シグナムが苦言を呈す。
「まあー、ええよ。ヴィータお帰り」
「お帰りヴィータちゃん」
「任務ご苦労だ」
「お帰りですぅー♪」
はやてや他のヴォルケンズが帰宅を喜ぶ。
「主、あまりヴィータを甘やかせては・・・・」
八神家の小姑?シグナムが、小言モードに入りかける。
「せっかく、一月半ぶりに家に帰ってきたんだし、大目に見てくれよー」
ヴィータはすかさず、はやての後ろに隠れる。
「ヴィータ・・・・・」
シグナムも、はやてを盾にされては口ごもるしかない。
本人は、はやてに見えないように、舌を出しているが・・・・



ぴんぽーん♪

玄関のチャイムが鳴る。
「はい、はーい♪」
シャマルが返事をしながら、
「サーチャーでは、男女二人連れみたいだけれど、危険な感じはしないみたいです」
八神家の警備を司る彼女がそう言いながら、玄関に赴く。
「どちら様でしょうか?」
一応、ドアチェーンを掛けたまま、覗き込むように応対する。
外に居るのはどうやら中年の夫婦連れのようだ。
ざっと見、危険人物で無いのを確認すると、チェーンを外しドアを開ける。
「夜分に失礼します。こちらは、八神ヴィータさんのお宅でしょうか?」
夫と見られる男性が、意外な人物の名を挙げる。
「ヴィータちゃん?」
シャマルも面食らったのか、思わず問い返す。
「ええ、こちらにお住まいだと伺っていますので・・・・」
どうやら彼女の顔見知りではないらしいが、
「おう、あたしがヴィータだ!! あんたら誰だ?」
奥から覗き込んでいたヴィータが、玄関先まで来る。


「申し送れました、私は森井と申します。実は貴女に、祖母から届け物です」
そう言うと、森井と名乗った男性は、妻と見られる女性から小脇に抱える位のダンボールを受け取ると、ヴィータに差し出した。
「??」
一瞬躊躇しかけるが、隣のシャマルが何も言わないところを見ると、危険なものではないらしい。
ヴィータは、彼女には少し大きすぎるダンボールを受け取ると、疑問を口にする。
「受け取ってなんだけど、こんなもん貰う理由、知んねーけど・・・・」

「三丁目の森井菓子店、ご存知でしょうか?」
「3丁目、菓子店・・・・」
言われて、暫く考え込むと思い出したのか、
「あー、ばーちゃんの所?」
思い至ったのか、頭を上下させ、同意する。
「祖母が亡くなる前、貴女にこれをと・・・・」
彼は少し悲しそうに目を閉じると、口を開く。
「先週、急に具合が悪くなると、そのまま・・・・。
意識が朦朧とする中、『ヴィータちゃんに、お菓子を・・・・』と何度も言ってました」
そう言うと、目頭をそっと押さえる。


ヴィータは、最初、森井と言う男性が何を言っているのか解らなかった。
「亡くなった?ばーちゃんが・・・・・」
次第に彼の言っている事が染み込んでくると、愕然とした。
手から力が抜け、『ドサッ』という音と共に、ダンボールが足元に落ちる。

「生前、祖母は、大変貴女をかわいがっていたようですね。
最近は、塾やらゲームやらで、駄菓子屋に寄る子供は少なくなりましたから・・・・」
「店を畳むかずいぶん悩んでいたようです。
義母さん、時々来る、貴女との話が一番の楽しみみたいで・・・・」
夫の言葉を繋ぎ、女性がそっと口を開く。

「夜分に突然、失礼しました」
夫婦はそう言うと、八神家を後にした。



「ヴィータちゃん!!」
シャマルは戸締りをすると、未だ放心状態のヴィータを揺すって正気に戻そうとする。
絶えかねたのか、はやてや他のヴォルケンズも集まる。
「ヴィータ、しっかりな」
「そうだ、ヴィータ。お前らしくない」
「ヴィータ」
「元気出すですぅー」
事情を察した彼等が次々と声を掛ける。
やっと己を取り戻したのか、ヴィータはのろのろと動くと、ダンボールを再び抱え、居間に移る。


「これは・・・・」
彼女が森井夫妻から渡されたダンボールを開けると、中には駄菓子やビー玉、紙風船などおもちゃがぎっしり詰まっていた。
「・・・・ばあちゃん」
予め、日が経ってもいい様にだろう、駄菓子は日持ちのするアメやすもも漬け、チューブゼリーが多い。
すももを一粒取ると、口に放り込む。
甘酸っぱい筈が、今日は何故だかしょっぱい・・・・
その様子を遠巻きに見つめる皆。
どう声を次に掛けていいのか、考えあぐねているらしい。


「・・・・ヴィータ」
意を決して、はやてが声を掛ける。
「・・・・はやてぇー」
立ち上がると、はやてに抱きつき、泣きじゃくる。
「ヴィータ。すっきりするまで泣いていいんやで・・・・」
彼女を優しく抱きしめながら、幼子をあやすように声を掛ける。
「「「「ヴィータ(ちゃん)」」」」
ヴォルケンズも駆け寄り、抱きしめる。
「・・・・みんなぁ」
今度は感極まり涙が出る。




数日後。
とある墓地、森井家と刻まれた墓石の前。
「ばーちゃん、なかなか来れなくてコメンな」
そう言うと、花束とスーパーの駄菓子コーナーで買った鈴カステラを供える。
「ばーちゃんには言ってなかったけど、あたし、魔法使えるんだ」
「昔は人を殺めたりして皆に迷惑掛けたけど、良い主のはやてやなのは達に会って、今度はみんなを守る側に居るんだ」
「ばーちゃん、見ててくれ。じゃーな!!」

空を見上げると、雲一つ無い陽気の中、セキレイが一際高く鳴いていた。
まるでヴィータの新しい決意を愛でるように。

−END−


posted by HAL at 23:54| 秋田 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | なのはSS 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月30日

Take shelter from the rain(雨宿り)前編

今回は、前後編の短編&ほろり路線に挑戦ひらめき


Take shelter from the rain(雨宿り) 前編


「ありゃ。しもたー」
キッチンからはやてのミスった声が聞こえる。

「はやてー、なんかしたのかー?」
「主、どうかなされたか?」
リビングでテレビゲームに勤しんでいたヴィータが、ゲームを一時停止してキッチンを振り返る。
傍らでは、手持ち無沙汰にそれを見ていたザフィーラが体を起こし、キッチンへと歩みを進める。

はやては冷蔵庫を閉めると、居間の方へやってきた。
足元に来たザフィーラの頭をひと撫ですると、ヴィータの側に来、
「や、今冷蔵庫、覘いたらな、お味噌丁度切らしそうになってん・・・・」
彼女にしては、若干歯切れが悪い。
そう言うと、顔を少し曇らせながら、両の手のひらを合わせながら、
「ちょ、お使い頼まれてくれへんか?」


「えー、いまー」
不満顔のヴィータ。
それもその筈、買い物は主にはやてにシャマル、シャマル不在時はシグナムが交代して担当の分担だった。
ヴィータは八神家のペット(!?)ザフィーラの散歩と、朝の玄関掃除だ。
それに、どうやらゲームが今、クライマックスらしい。

「明日のお味噌汁の具、ヴィータの好きなもんにしてもええよ・・・・」
飴とムチ作戦を試みるはやて。

「うーん、もう一声!」
少し考え込むが、更にベットを要求するヴィータ。
さすがに見かねたのか、
「ヴィータ、主に対して不敬だぞ!!」
ザフィーラが、嗜める。
本来、いつもならシグナムかシャマルが、問答無用で彼女を強制的に行かせるのだが、生憎、二人とも任務で夕食時にならないと帰宅しないのをいい事に、調子に乗ってるみたいだ。

「しゃあないなぁー、お釣りでアイス買ってきていいから・・・・、二人には内緒やで」
軽くウインクすると、紙幣2枚と味噌の銘柄を書いたメモを一緒に渡す。
「じゃ、うちは夕飯の支度に掛かるから、ちゃっちゃと頑張ってやー」
「ヴィータ、頼んだぞ」
エプロンを着け、後ろ手にひらひらと手を振り、キッチンに向かうはやて。
ザフィーラも定位置のソファ横に伏す。


好条件を出され、降参のヴィータは、ゲームの電源を切ると立ち上がり、
「はやて、じゃあ行ってくるー」
そう言うと、玄関に向かう。
「お味噌汁の具も買うてきてなー」
靴を履いていると、そんな声がキッチンからしてきた。





「さーて、味噌も買ったし、味噌汁の具にするナメコもOK。アイスもはやてとあたしの分、おまけのザフィーラの分も買った」
アイスを買ったことで、鼻唄交じりにスーパーを出ようとした彼女だったが、自動ドアを出ると雨が降り出していた。

「やっべー、傘持ってきてねーや」
周りを見ると、会社帰りや買い物帰りの主婦、学生らが足早にカバンやバックを傘代わりに行き来している。
管理世界でなら、短時間は魔力シールドを張りつつ、飛行魔法でひとっ飛びなのだが・・・・
ここでそんなことをすれば、はやてに迷惑が掛かるのは必定・・・・
幸い、まだ小降りなので、意を決してスーパーの軒下から飛び出る。


三分の一ほど来た所で、近道とばかりに表通りではなく、住宅街の裏道を通ったのが誤算、そこかしこで道路工事が行なわれていて、かえって遠回りになった挙句、初めての道に出てしまっていた。
そうこうする内に、いよいよ雨が本降りに。
「うわっ、さすがにこれは無理っぽいか・・・・」
手近な建物の軒下に避難するヴィータ。
ここも裏通りとはいえ、道行く人はそれなりに居る・・・・
「アイスもやっべー。リィンが居ればなぁー」
スーパーのドライアイスサービスで幾分ましとはいえ、溶けてくるのは時間の問題。
リィンが居れば、凍結魔法でアイスは大丈夫だが、まだ、フルサイズでの長時間維持は無理らしいし、何より、今日は通信管制資格取得の為、管理局の講習に出向いていて不在だ。


「・・・・ちゃん」
「ん?」
なんか呼ぶ声がする。
道路を見渡すが、雨で皆、足早に帰路を急ぐ人達だけであり、雨宿りしているヴィータに気を向ける人など居ない。
「嬢ちゃん!!」
「うわっ!!」
後ろからいきなり、声を掛けられちょっと動揺・・・・・
(ヴォルケンリッターのこのあたしの背後を取るとは・・・・)

恐る恐る、後ろを振り返ると、老婆が建物の中から手招いてる。
中を見ると、色とりどりの菓子やレトロ溢れるおもちゃが並んでいる。
どうやらここは店らしい。
入り口の横戸の脇を見ると、殆ど掠れて見えない看板に『駄菓子 ○○菓子店』と書いてあった。


「嬢ちゃん、雨宿りしてらば、お菓子買って行きんさい」
ニカッと金歯を見せながら、老婆が年の功か有無を言わせぬ迫力で菓子を勧める。
(実際には、夜天の書の守護騎士としてヴィータの方が老婆の数倍、年を経ているのだが・・・・)
ふと見ると、スーパーやコンビにでは見ない、カラフルな色の菓子が様々に並んでいて、ヴィータも興味を引かれたのも事実だ・・・・
胸のポケットに手を突っ込むと、ジャラジャラと小銭の音がする。
「安いから買って行きんさい。これなんか30円じゃて。うまいっせ」
そう言うと、ショーケースから串に団子状に刺さったカステラを1本出し、ヴィータの目の前に突き出す。
勢いに負け、思わず受け取った彼女の前に、老婆の手のひらが出される。
「30円!」
商品を受け取ってしまったので、渋々ヴィータはポケットから50円玉を出すと、
「わーったよ、ほら」
お金を手のひらに載せると、老婆は側のザルから10円硬貨2枚を彼女に渡し、
「ほい、20万円の釣りじゃ」


ポケットに釣りを入れると、受け取ったカステラを半分ほど一気に齧り取る。
最初は不味そうに、くっちゃくっちゃと口を動かしていたが、『んっ』と止まると、残りも齧り取った。
「ウマい! 美味いよ、ばーちゃん!」
串を頭上高く揚げ、興奮した面持ちで一気にまくし立てるヴィータ」
「ほうだろ、ほうだろ」
満面の笑みで、その様子に微笑む老婆。

ふと壁際を見ると、大分時間を潰してしまったみたいで、一気に青ざめるヴィータ。
「もう帰んないと・・・・」
そう言うが、外はまだまだ雨が降りしきっている。
「嬢ちゃん、コレ使いなんせ」
そう言うと、隅っこに立て掛けてある傘を差し出した。
「いいのか?」
「嬢ちゃんの笑顔がえがったから、お礼さ」


「じゃあ、ばーちゃん、借りてっからな」
ヴィータはそう言うと、雨の中駆け出していった。


ps.アイスの件、シグナムにばれて、小分けにされてみんなのデザートになりました・・・・




posted by HAL at 15:42| 秋田 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | なのはSS 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする