2009年07月29日

Carry away(拉致)#2  旅行前夜2

仕事が出来て、更新速度遅くなってすいませんふらふら
何とか月一以上のペースで上げていきたいなぁカチンコ



Carry away(拉致)#2
旅行前夜2



「『・・・・お兄ちゃん、お土産楽しみにしてて』」
口で文面を言いつつ確認しながら、携帯の送信ボタンを押す。
ピッ、送信音と共にメールが送られる。

海鳴市・ハラオウン家・リビング
「フェイト〜、クロノにメールかい?」
いつもの子犬フォームで無く、獣人形態でくつろいでソファにだらりと腰掛けているアルフが、同じくソファにくつろいでいる彼女の主・フェイトに声を掛ける。

「うん。本当は通信の方が良いいのだけれど、お兄ちゃん、一昨日から本局に缶詰でお仕事だから・・・・」
少し気落ち美味に言う、義妹フェイト。
折角の旅行、『行って来ます!』と兄・クロノに言えないのが残念そうだ。
「アルフもゴメンね、学校の行事だから、一緒に連れて行けなくて・・・・
申し訳無さそうに首をすくめる彼女。
「仕方ないよ。それに毎年、温泉旅行には行ってるんだし、フェイトには友達と思い出を一杯作って欲しいからさ・・・・」

海鳴に引っ越してきて以来、なのはの高町家やすずかの月村家、アリサのバニングス家、そしてはやての八神家と家族ぐるみの付き合いで、年一回の温泉旅行は恒例になりつつある。
ちなみに、さすがに一行総勢20名以上に膨れ上がった為、月村家スーパーメイドのノエルが、チャーターしたマイクロバスを駆っての行脚になったのだが、それは別の話である。


フェイトとアルフがちょっとしんみりしてきた所に、夕ご飯の片づけを終えたリンディが一息つけにやって来た。
勿論、手にはミルク砂糖たっぷりのリンディ茶を持って。

「フェイト、準備は終わったの?」
湯飲み茶碗から一口啜って、一息つくと口を開いた。
「はい母さん。準備万端済みました」
「みんなと一緒の長期旅行は初めてだから楽しみよね〜♪」
我が事のように喜ぶリンディ。


「はやて、やっと足が完治して旅行くらいの長時間は出歩けるようになったし、なのはも大怪我のリハビリが終わって、医務官さんのお墨付きで教導隊に復帰したから、アリサやすずかと5人で一緒の3日目の自由行動、すごく楽しみにしています♪」
魔法や管理局の事もあり、裏表無く付き合える親友達とのひと時は何よりの思い出になるだろう。

「明日の旅行、寝坊してはいけないから、今日は早めに休みなさいね」
飲み終わった茶碗を片付けながら、リンディは一言言う。
「はい。おやすみなさい、母さん」
「おやすみ、フェイト」
「おやすみー」
自室に戻る彼女の後を、子犬フォームに戻ったアルフがてくてく付いて行く。





「はやてー、カバン、ここに置いとくよー」
「うん、ヴィータ。おおきにな」

海鳴市・八神家
ここ八神家でも、主はやての一大イベント前夜ということもあり、騒がしい。
「主はやて、頼まれていた物、入れておきます」
「はやてちゃん、着替え、ここに置いときますね」
「主、しおりは此処に」
「うんしょ。歯磨きセット、持って来たですぅ」
「みんな、ありがとうな」
リビング一杯に広げられた荷物を、総出で確認し詰め込む。

1時間後。
「ふう、ようやっと終わったなぁ」
「おつー」
「お疲れ様です」
「はやてちゃん、お疲れ様」
「お疲れ様です、主」
「お疲れですぅ」
思いの外、大荷物に・・・・


「なあ、はやてー、持ってくカバンと一緒にあるバスケットみたいなの何だ?」
ヴィータが旅行カバンの脇に置いてある、ランチバスケットそっくりなものを指差す。
「主はやて、私も聞きたかったのですが・・・・」
「はやてちゃん、アレって、今日、管理局から急ぎで来た荷物ですよね?」
「何やら、見た目にそぐわぬ大変な物という気がしますが・・・・」
「・・・・」
ヴォルケンズの面々が準備の時から疑問に思っていたのを口にする。


「ふっふっふ・・・・♪」
「ふっふっふですぅ〜♪」
リビングのテーブルに、件のバスケットを置いて、不気味に微笑むはやてとリィン。
はやてならいざ知らず、リィンも一緒になっての行動に、訝しがるヴォルケンズ。

はやてはおもむろにバスケットを開けると、
「じゃーん!! 『リィン‘Sハウス』の御開帳やー♪」
「じゃーんですぅ♪」
開けたその中には、まるでドールハウスの一室の様な空間が広がっていた。
小さなベット、クローゼット、壁際(?)には管理局の制服が掛かっている。

「主はやて、こ、これは・・・・」
「はやてちゃん、コレ、なんです・・・・か?!」
「は、はやて、まさか・・・・」
「主、もしや・・・・」
一つの可能性に行き当たった彼らは、驚きの声を上げる。
「そうや、明日からの修学旅行、一緒にリィンが行くんや♪」
「そうですぅー♪」
『ピンポーン』と正解の音が、気のせいか聞こえてくる一同。


しばし唖然としていたヴォルケンズだったが、さすが烈火の将。
シグナムが一番にダメージから回復し、主に問い質す。
「主はやて、管理世界の任務ならばともかく、ここでリィンを同行させるなど、リスクが大きすぎます!」
魔法や融合機の存在が知られている(融合機自体、超希少だが・・・・)管理世界と違って、管理外世界であるここ地球でリィンの姿が見つかったなら、間違いなく大騒ぎだ。
「あたしらが我慢して、はやてに付いて行かないのに、リィンだけずりーよ」
口を尖らせ、ヴィータが抗議の声を上げる。
修学旅行の話が出た時、ヴォルケンリッターの皆は主に危険があってはと、旅行に付いて行く事を主張したのだ・・・・
病み上がりとはいえ、家族をゾロゾロ連れていっての行動はさすがに恥ずかしいとの、はやての言で、渋々諦めた彼女らだったが・・・・


「まあ、病み上がりでも、なのはちゃん達や先生方もサポートしてくれるって言うてくれてるし、リィンはまだ生まれて人生経験が不足なんやから経験の一環と言うことで・・・・」
「でも・・・・」
シャマルが言いよどむ。
「それに何より、うちの魔法管制は『シュベルトクロイツ』と『リィン』が揃って、狂い無く使えるんやから、もし出先で何かあった場合、リィンが居ないと危ないし・・・・」
しゅんとなって、ちょっと上目遣いにヴォルケンズを見るはやて。
心なしか、目には涙がうっすらと・・・・
後ろに回した手には、目薬がしっかりとあった・・・・

『うっ』と唸り、先日付いて行く事を主張したシグナム、シャマル、ヴィータ。
「それはそうですが、空港の手荷物検査や、高町やテスタロッサ達以外の生徒にはどう対応を?」
一番肝心のところが触れられていない・・・・

はやてがリィンに目配せすると、バスケットの中にリィンが入り、おもむろにタッチパネルを出し操作する。
すると、その姿が消え、見た目上は医療キットや携帯端末が入っているように見えた・・・・
「おー、すげー!!」
素直にその様子に感嘆の声を上げるヴィータ。
ザフィーラも、覗き込み賞賛の声を上げる。
「見た目、それがしの目でもかなり探査をきつくしないと視認出来ないとは・・・・」

「いったいコレは・・・・」
シグナムがはやてに説明を求める。
「修学旅行にリィンを連れてく事に決めたとき、マリーさんに相談したんよ。
そしたら、こんないいのを作ってくれて」
「マリーさんが言うには、軽い認識阻害魔法と、被験者への幻惑魔法を組み込んだ、特製のリイン‘Sハウスらしいですぅ〜♪」
はやての言葉に続いて、リインも説明する。
「魔導師相手や、管理世界の人間は『魔法』という前提があるから、引っ掛かり難いらしいんやけど、こっちの空港の係官には今のようにも見えて、触った感覚もそういう風に認識されるんやて」
専門的な事は分からないので、マリーの説明をそのまま説明する。

「いいのですか? 高町やテスタロッサがどう言うか・・・・」
シグナムが懸念を言う。
「その点は安心や。
なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん達で、担任の先生を説得済みや」
ぬかりは無しと、『ぐっ!』と親指を立てて作戦勝ちを誇るはやて。


「・・・・分かりました。主がそう言われるなら、このシグナム、異論はありません」
ここまで用意周到に根回しをされれば、さすがのシグナムも折れるしかない。
リーダーの降参を見て、他のヴォルケンズも渋々引き下がる。
「はやてちゃん、気をつけてね」
「はやてー、ずりーよ」
「主、良い旅を」


「ただし、もし何かあった場合、直ぐに呼んで下さい。
我ら『夜天の主』に仕えるヴォルケンリッター。
何時いかなる時も、即座に馳せ参じます故」
シグナムがおもむろにはやての前に跪くと、他の面々も、同じ様に跪く。

はやても自分を思い遣ってくれる彼女らに、少し感極まったのか、シグナムの前に片膝を着くと、
「頼りにしてるで、みんな。
私がピンチの時は、直ぐに来てや!」

「「「「御意!!」」」」

四人揃って頭を垂れる。



「うわーん、リインの事も心配して欲しいですぅー・・・・・」



2009年07月14日

Carry away(拉致)#1  旅行前夜1

いよいよ主人公が登場ひらめき


Carry away(拉致)#1
旅行前夜1



「『・・・・・お土産楽しみにしててね^^
ユーノくんへ。
なのはより』」

軽やかな送信音と共に、ケータイからメールが送られていく。
「ユーノくんに何お土産買って来ようかなぁ〜」
メールを送ったケータイを机の上に置くと、旅のしおりと旅行についてはベテランのアリサとすずかから聞いて作ったメモを見ながら少女が楽しそうに、メロディを口ずさみ、旅行カバンの中身を再確認していく。

『楽しそうですね、マスター』
机の上のレイジングハートが、上機嫌のなのはに声を掛ける。
「うん♪ フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん、はやてちゃんと一緒に、沖縄に修学旅行だから、すっごい嬉しいの♪」
そう、なのは達、私立聖祥大付属小学校6年生は明日から3泊4日で沖縄に修学旅行の予定だ。
「レイジングハートも一緒に連れってあげるから、一緒に楽しもうね♪」
カバンを閉じると、愛機である真紅の貴石『レイジングハート』を手に取り、語りかける。
『Thanks! 私も、見聞を広めたいですね♪』
嬉しそうに、瞬く。


コンコン。
部屋のドアがノックされる。
「なのは、明日は早いんだろ。寝坊しないように、今日は早く寝たほうがいいぞ!」
心配したのだろう、兄・恭也が声を掛けてくる。
「うん、今寝るところだよ、お兄ちゃん」
心遣いに感謝しつつ、ベットに潜り込む。
「おやすみ、レイジングハート」
『良い夢を、マスター』




時空管理局・本局・執務室

「なーに、クロノ君、ニヤニヤして〜♪」
執務官補佐エイミィ・リミエッタに揶揄されながら、彼、クロノ・ハラオウン執務官は通信端末から目を離す。
「いや、なに、フェイトからメールが来てな。明日からなのは達と一緒に修学旅行らしい」
そう言うと、ちょっと気まずそうに頬を掻く。
「この所忙しくて、フェイトが修学旅行に行くのすら忘れていたんだが、『お兄ちゃん、お土産楽しみにしてて』なんて、メールを寄越したんだ」
義兄妹になってまだ3年程だが、気の利かない兄を助け、思いやってくれる良く出来た妹である。

「ああ、フェイトちゃんね。私の所にもフェイトちゃんやなのはちゃん、はやてちゃんから、メール着てたよ」
「なのは達からもか?」
ちなみに、彼には二人からは来ていない。
「『お土産、何がいいですか?』って、勿論、そこは抜かりなく、『木刀&ペナント』と答えておいたよ」
ニヤリと笑うと、大仰しく敬礼を彼にする。
「そんなの何に使うんだ? 邪魔だろう・・・・」
意味の無いのを頼んだとばかりに、ため息一つ。

「ちっちっち、そこんとこ解らなきゃー、旅の醍醐味が落ちるってもんでさぁ〜、クロノ君」
人差し指を振ると、旅の定番土産を挙げる。
「まあ、はやてちゃんの場合、シグナムっていう実用本位の人が居るしね」
本来なら物置の片隅に追いやられる木刀も、シグナムならバリバリの実用品だ・・・・

「良く出来た妹を持って、幸せだねぇ〜」
「ああ、全くだ」
エイミィの軽口を軽く受け流すと、書類に目を通す。


「また、行方不明事件か・・・・、この所多いな」
書類は、この所頻発している事件の概要を記した捜査協力への通達だった。

「そう。ここ暫く、子供たちばっかり狙った誘拐事件が頻発しているの。
場所は、殆ど管理外世界で、歳は、なのはちゃん達くらいまでかな」
「管理外世界か・・・・、基本的にそこには常駐している局員は居ないから、次元犯罪であっても、後手後手で検挙は難しいからな・・・・」

管理外世界に対しては通常不干渉で、どうしても偶然現行犯で捕まえた時に事件が明るみに出るという、いたちごっこが続いている。
ましてや、魔導師の割合が多い次元犯罪者は、魔法を知らない現地の治安部隊に捕まえられる筈も無い。
「それに、実際は誘拐と言っても身代金の要求とかは無いから、誘拐(Kid Nap)よりは拉致(Carry Away)の方がニュアンス的にはあってるかな?」
エイミィが事件の困難さを言う。
誘拐なら身代金や条件で必ず犯人側から接触があるが、拉致はそのまま人身売買で顧客に流れていく可能性が高い。
そうなると、捜査の出来る範囲は、俄然限られてくる。

「・・・・明日から旅行のフェイトたちが、心配だな」
妹思いの兄らしい発言をするクロノ。
「心配しすぎだねぇ、クロノ君は。
大丈夫だって! ちょっとシスコン気味じゃないかなぁ〜」
茶化す彼女。
「なっ、エイミィ!!」
赤面する彼の声を遮って、
「それに、フェイトちゃんだけでなく、なのはちゃん、はやてちゃんも一緒なんだよ。
単純に火力&戦力だけなら武装隊の師団規模。私なら裸足で逃げ出すね・・・・」
笑いながら次の決済書類の山を持ってくる。

「ほらほら、仕事溜まってるんだから、さくさく行こうね」
「エイミィ、君は鬼か・・・・」
苦虫を噛み潰した顔のクロノ。


ある意味、クロノの心配は見事に的中するし、エイミィの軽口も的中するのであるが、
この時点では、単なる杞憂の一つであった・・・・



2009年07月12日

Carry away(拉致)#0  プロローグ

新シリーズ開始ですカチンコ
今回は、真面目な話です・・・・たぶんぴかぴか(新しい)


Carry away(拉致)
#0 プロローグ



ミッドチルダ首都クラナガン近郊
別荘地帯

一般富裕層の別荘が数多くある地区から、奥に踏み込んだ更に奥にある、各界の要人や管理局上級官僚の別荘地。
その一角に会場はあった。

古城もかくやの立派な佇まいの邸宅周辺には、黒塗りの豪華なリムジンがぎっしり停められており、夜会の会場かと言われれば信じてしまいそうである。
ただ違うところがあるとすれば、幾人もの黒ずくめの男たちが周りを固めており、手にはめいめいアームドデバイスやストレージデバイス、中には禁止されている筈の質量兵器である銃を持っている者まで居る。


邸宅の大ホール。
普通なら豪奢なドレスに身を包んだ淑女や、タキシードの紳士がダンスを踊っているべきホールには、紫煙やアルコールの臭いに混じって、一種異様な雰囲気が立ち込める。
薄暗いホールに点在する円卓に着く各人の顔には、男女問わず蝶をかたどったマスクを被っているが、その身なりから、かなりの地位や資産家だという事が窺える。
その視線の先にはステージが設けられ、同じ様にマスクを被った司会者が進行を勤めている。


「2000まーん、2000万。そちらの方は2800万をコール。
3000万は居ませんか? 居ませんか?
・・・・では、2800万でハンマープライス!!」
落札を告げる木槌の音が会場に鳴り響く。
「只今の商品、LotNo.19は、2800万で108番の方が落札されました。落札有難うございます」
司会者がそう言うと、口ひげから老紳士らしいマスクの男性が軽く手を上げ、周囲の賛辞の拍手に答える。
ここまでは普通のオークションと全く変わらない。
参加者や主催側の異様な出で立ちを除けばだが・・・・
一段高いステージ上を見れば、オークションに掛けられる商品は高価な美術品や、ロストノギアでは無く檻に入れられた動物だった・・・・
檻に入れられているのは、ライオンの胴体に人間の顔、さそりの尾を持ち、更には蝙蝠の羽まで付いている。
地球では、マンティコアと言われる空想上の魔法生物だった。
会場の熱気に当てられ、盛んに吠え、檻にぶち当たり暴れるソレを、脇から出てきた係員(勿論、マスク姿)が檻が乗った台車ごと押して、ステージ上から退場させる。



「さて、ラストは本日の目玉!! LotNo.20、第31管理外世界『セイレーン』産、『人魚』です!!」
ステージ上には強大な水槽が運び込まれ、司会が手を上げると水槽上部を覆い隠していた布が取り払われる。
「「「「「「おおー!!」」」」」
会場全体が騒然となる。
スポットライトが当てられた水槽には、全裸の女性が浮かんでいた。
ただし、その下半身は腰から下が青く鈍色に輝く鱗に覆われた魚の胴体だったが・・・・
彼女は、周囲の様子に気づくと、
『%#&%、@φω$α¥!!』
水槽に張り付き、おそらく『誰か、助けて!!』と懇願しているのであろう、壁面を叩き、ミッドチルダ語ではない言葉を上げる。
その様子で、会場のボルテージが更にヒートアップする。
「さすが、幻と言われた人魚。美しい!!」
「是非、宅の湖のクルージングの目玉にしたいわぁ」^^
「いや、うちのリビングの水槽に!!」
注目の逸品なだけに、参加者の殆どが色めき立つ。


「お客様方、充分にご吟味いただけたでしょうか?
では、スタートさせて頂きます。
こちらの商品、お代は1億からです」
スタートと同時に、次々と手が挙がり、瞬く間に10億を突破する。

「そちらの方から12億5000万の手が上がりました。
13億居ませんか?居ませんか?」
司会がハンマープライスとばかりに、木槌を叩こうとした瞬間、
「12億6000万!!」
落札しかけた人物とは反対方向から手が上がる。
すかさず、今度こそとばかりに、更に金額が釣りあがり、500万単位で駆け引きが継続される。


「・・・・では、LotNo.20は13番の方が13億3500万で落札となりました。
有難うございます」
司会が落札を告げると、再び拍手が鳴り響き、落札した青年実業家らしい身なりのあか抜けた人物が、祝福(やっかみ半分)に応えている。


「落札なされた、お客様に申し上げます。
落札商品は、当オークション指定口座に代金が振り込まれ次第のお引渡しとなります。
尚、現金で今お支払い頂きますと、商品はサービスとしてお客様指定の場所まで、秘密裏にお運び致しますので、ご利用下さい」
会場にアナウンスが響き渡る。
最後の品が終わった為、席を立とうとする者が出始めるが、ステージ上にこれまた、壮年と思しき人物が上がり、話し始める。
「当オークション主催の、Mr.Kと申します。
本日は皆様のご利用有難うございます。
お陰さまで盛況の内に、今回のオークションを終わることが出来ました。
これはひとえに、皆様が秘密を堅く守って下さって頂けたお陰であると、感謝の念に絶えません。
これまでのご愛顧に対するお礼として、次回は貴重な管理外世界の住人を予定しております。
子供をメインに目玉商品を数多く取り揃える予定ですので、皆さん、資金のご用意をお願い致します」
そう言うと、会場からは割れんばかりの感嘆の声が沸きあがる。
「かわいい娘がほしいわぁー」
「これは是非とも参加せねば・・・・」
「楽しみですな」
席を立ち、帰り支度をしながら、同伴者や知人同士、次回に馳せる。



数日後・・・・

「次回の商品のターゲットは決まったか?」
「はい、旦那様。辺境に第97管理外世界というのが在りまして、そこの住人はミッドチルダと変わらない容姿と確認されています」
薄暗い執務室で、壮年の主と歳若いが切れ者執事風の二人が密談をする。
窓の外遥かには、時空管理局地上本部棟先端が闇夜に照らされて見える。
「第97管理外世界か・・・・」
その名を聞いて、少し考え込む。
「何か、ご懸念でも・・・・?」
「いや、何か引っ掛かることがあったような気がするのだが、思い出せないな。
何、大したことでは無いのだろう・・・・」
「そうですか・・・・」
胸を撫で下ろす執事。
「今度の開催の目玉になるようなのを期待しているぞ」
「まもなく、手の者が狩りに出向くかと・・・・ ご期待に沿えるものを必ずや」
そう言うと、彼は音も無く静かに執務室から退室していった。
「さて、今度はいくらの値がつくか、クックック・・・・」
男はそう一人ごちると、愛用の葉巻に火を付け、紫煙を燻らす。



それが、破滅への序曲とも知らず・・・・